2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of Interactions between Co-existing NOM and Environmental Chemical Substances Through Developing and Exploiting Databases of EEMs and High Resolution Mass Spectrometry Analyses
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22K04376
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
鈴木 裕識 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20762272)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 天然有機物 / 励起-蛍光マトリクス / 精密質量分析 / フミン酸 / 水環境 / 環境化学物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、異なる起源の5種フミン酸標準品を対象に精密質量分析装置LC-QTOF/MSの分析データを取得し、フミン酸特有の部分構造推定のためのデータベース(DB)を作成して、環境試料分析データの解析に適用した。 データベースに登録するイオンの質量電荷比情報(コンポーネント)の絞り込み操作として、①分析試料調製に用いる超純水や溶媒等からも検出されるコンポーネントの除外、②多段階濃度で調製した試料の分析データにおいて濃度:強度比の直線性のないコンポーネントの除外、③各標準の起源由来(土壌等の環境由来)の夾雑コンポーネントの除外の3つの操作を段階的に実施した。例として、標準品Aのコンポーネントは無操作時の6,827個から上述の3操作実施後には321個へ減少した。 さらなる有効データの絞り込み操作として、標準品の三次元励起・蛍光スペクトル(Excitation Emission Matrix:EEMs)分析データとLC-FLDの分析データにおける蛍光スペクトル情報の突合、LC-FLDとLC-QTOF/MSにおける分析データの保持時間情報の突合によるデータ紐づけ手法を検討し、構築した。結果として、標準品Aについては全コンポーネント6,827個のうち99%以上の夾雑コンポーネントを除外し、僅か46個をフミン酸(標準品A)由来のコンポーネントとして抽出して、今後のデータ解析に有効なデータとしてDBに登録した。 見出されたDB情報を基に、ある流域中の環境水試料(n=32)のLC-QTOF/MS分析データに対してクラスター分析を実施した結果、山間部由来の試料と流入下水試料が最も離れたクラスターに分類され、含有される天然有機物の構成が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度の目標としていた、三次元励起・蛍光スペクトル(Excitation Emission Matrix:EEMs)分析データと精密質量分析LC-QToF-MSデータの紐づけによる天然有機物の複合データベース(DB)の作成について、その紐づけや夾雑情報除外の操作手順を構築することを達成した。その際、LC-QTOF/MSとは別にLC-FLDを導入することにより、保持時間を校正し、DB登録情報の正確性を向上した。また、R4年度中には天然有機物の標準試料に対する塩素処理実験を開始することを想定していたが、DB構築の優先度を重視し、その取り組みに専念した。以上の点から、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
見出されたデータベース構築手法を用いて、天然有機物に対する複合データベースのさらなる拡充を目指す。また、水道原水を含む多様な環境水調査を実施し、データベース情報との比較から天然有機物の環境中挙動を解析する。さらに、フミン酸等の標準試料を用いて塩素処理実験を行い、実験前後の分析データの差異から、浄水処理における天然有機物の挙動を検討する。
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