2023 Fiscal Year Research-status Report
治水と環境の両立を図る"霞堤遊水地"の提案と機能の検証
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22K04387
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
森 照貴 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 主任研究員 (50600095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東川 航 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70896521) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 霞堤 / 遊水地 / 避難場所 / 洪水 / 淡水魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
土木研究所の実験河川にて、小規模な遊水地を模したシステムを引き続き整備し、5-6月にかけて出水による淡水魚の避難行動に関する実験を行った。実験河川で人工的な出水を発生させ、小規模遊水地に河川水が流入するタイミングと継続時間、出水中に発生する河川での流速や水深に関するデータの取得した。小規模遊水地における越流堤を模した角落し部分については、わずかな増水でも遊水地に河川水が流入する高さから、最大出水時にのみ流入する高さまでの3段階の調整した。今年度は、昨年度に実施した予備実験の結果を踏まえ、大型の捕獲網を用いて、出水時に避難してきた魚類の全数捕獲できるようにした。洪水の初期から河川水が流入する最も角落しの高さが低い遊水地と、洪水の途中で流入する中程度の高さに角落しを設定した遊水地とでは、どちらも河川から遊水地へと移動する淡水魚が捕獲され、個体数や種数についての差は見られなかった。一方、洪水のピーク流量近くで流入するように角落しの高さを設定した水地では、捕獲された個体数は少なく、淡水魚が遊水地へと避難することはほとんどみられなかった。魚の捕獲方法について改善を行い、大型の捕獲網を用いたことで、出水前から小規模遊水地に生息している魚類を除去する必要がなくなった。これにより、出水により避難してきた魚類のみを捕獲できた。得られた成果については論文としてまとめ、現在投稿中である。本研究の結果、洪水時における淡水魚類の避難行動と遊水地のデザインに関する重要な知見が得られ、今後の河川管理および生態系保全に貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は予定通り、予備実験を踏まえた本実験を行うことができた。得られた結果についても取りまとめ、論文として投稿することもできた。魚類の胃内容物に関する予備調査も進めており、次年度以降の検討を滞りなく進められるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目から実施予定の、魚類が陸生の餌資源を利用するか否かについて、2年目から胃内容物の予備的な調査を進めている。これまでに複数種の淡水魚種を対象に調査を行ってきたが、陸生資源として、昆虫だけでなく植物も利用している可能性が示唆される結果が得られている。今後、DNAを用いた分類群の特定も予定しているが、胃内容物の調査結果を踏まえ、対象魚種の選定に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、小規模遊水地を用いた実験を優先的に行ったことで、DNAなどを用いた胃内容物の詳細な分析については次年度以降に実施するに変更したことで、次年度使用額が生じることとなった。分析に必要となる薬品や資材については、次年度に購入することを予定しており、物品費としての使用を考えている。
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