2022 Fiscal Year Research-status Report
社寺建築を対象とした近代和風建築の鉄筋コンクリート造化に関する研究
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22K04523
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
栢木 まどか 東京理科大学, 工学部建築学科, 准教授 (10453820)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート造 / 社寺建築 / 近代和風建築 / 伝統様式 / 不燃化 / 災害復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近代における伝統様式建築の鉄筋コンクリート造化を、近代和風建築の枠組みから捉え直し、その技術革新について明らかにすることである。木造伝統様式を忠実に再現した社寺建築を対象に、様式の近代化と構造の変化が建築家・施工業者の職能にどう影響したか、技術的な工夫を検証する。これまでの調査を通じて、戦前期の鉄筋コンクリート造社寺建築の多くは設計者・施工者とも事例ごとに異なり、木造意匠の再現方法や屋根構造を支える大架構等、独自性が高いことが明らかになってきた。しかし、その個別の手法研究や評価は進んでおらず、鉄筋コンクリート造建築黎明期の日本建築史における位置づけを改めて考えたい。 本年は、特に近代和風建築としての鉄筋コンクリート造建築全般の事例およびこれまでの調査成果を整理した。近代和風建築と総称されるものを、大きくは3つの視点で分類する。①近代化=西洋化 「洋風」に対置される存在として自覚された「和風」→「和洋折衷」様式、②伝統的な日本建築の成熟した姿としての近代和風建築→さまざまなレベルでの伝統様式・技法の完成(西洋技術の導入も含む)、③「近代性」をもった和風建築・新たな近代的機能をもつ施設、の3つであり、木造を模した鉄筋コンクリート造社寺建築は、②における最新技術の導入と整理した。 また、「和風/日本風」デザインが意識される時代背景と新構造としての鉄筋コンクリート造による設計の融合について事例収集の目的から、関東大震災(1923)と近い時期に北但馬地震(1925)により被災し、復興した兵庫県豊岡を視察し、中心市街地の鉄筋コンクリート造共同建築や、周辺の宗教施設の復興について踏査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年の研究としては、文献史料調査による対象建築のリストアップ、背景把握と事例収集、対象建築及び設計者、施工者に関する文献・図面収集を進めており、特に「近代和風建築」としての取り扱いを分類把握し、鉄筋コンクリート造社寺建築の位置づけを整理した。現地調査については、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大による制約も大きかったことから、今後、状況が許せば、地方都市における事例調査を拡大していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として、まず、これまで進めてきた山形県長源寺における調査研究成果を論文として報告する。その上で、東京を中心にまとめた事例についても、論文としてまとめるための整理を進める。 事例調査として、東北地方および関西地方における戦前期鉄筋コンクリート造寺院建築の現地調査を計画しており、現存事例の収集を引き続き続けていく。
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Causes of Carryover |
2022年度は新型コロナウイルスの流行が続き、特に旅費を伴う調査については先方都合により進められなかった面があるため、想定していたより繰越は大きくなっている。今後、地方都市の事例調査を中心に、調査を進めていきたいと考える。
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