2022 Fiscal Year Research-status Report
ダブルペロブスカイト型複合酸化物を基材とする新しい着色無機顔料の開発
Project/Area Number |
22K04698
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
増井 敏行 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00304006)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ダブルペロブスカイト / 無機顔料 / 色材 / セリウム / 複合酸化物 / 配位子場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
色材である無機顔料において有害元素を含む従来のものから,安全な物質かつ安全なプロセスで合成された材料へ転換する機運が高まっている.しかし,その有力な候補となる金属酸化物材料においても解決すべき課題がいまだ多く存在する.本研究では,物理的・化学的に安定なダブルペロブスカイト型金属複合酸化物を母体とし,発色源となる希土類イオンを固溶させて組成や結晶場を制御することで,安全な物質とプロセスで多彩な色を発現する新規酸化物系無機顔料の開発を目指した. 令和4年度は,ダブルペロブスカイト型構造のBa2RETaO6(RE = La, Gd, Y)を選択し,RE3+サイトにCe3+を固溶させたBa2RE1-xCexTaO6(x = 0~1)の合成を行い,得られた試料の色彩を評価した.粉末X線回折測定の結果,全ての試料において目的相が単相で得られた.また,母体のBa2RETaO6(RE = La, Gd, Y)についてリートベルト解析により結晶構造パラメータを精密化した結果,RE3+サイトは [REO6]の八面体で存在し,それぞれのRE-O間の平均結合距離は中心にあるRE3+イオンのイオン半径が小さいほど短くなり,La3+ < Gd3+ < Y3+の順にCe3+の受ける結晶場が強くなることがわかった. 合成した試料はCe3+の4f-5d遷移により,波長400~550nm付近の紫色から緑色に相当する光を強く吸収した.また,La,Gd,Yとイオン半径が小さくなるに従い,Ce3+の受ける結晶場が強くなるため,光吸収波長は長波長側にシフトした.さらに,各試料の色はCe3+の固溶量に依存し,Ce3+濃度が増すに従い,RE = Laのときは橙~赤橙に,RE = Gdのときはピンク~赤橙に,RE = Yのときは紫~赤橙にそれぞれ制御できることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な着色無機顔料として,ダブルペロブスカイト型構造のBa2RE1-xCexTaO6(RE = La, Gd, Y, x = 0~1)合成した.REの種類と着色源であるCe3+濃度を変化させ,Ce3+の受ける結晶場の強さを調節することにより,色調を紫~赤橙に制御可能であることを明らかにした.今後,Baの一部をSrやCaに代えることによって,異なる色調や高い彩度が得られることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,アルカリ土類金属のBaをSrやCaに代えた試料について同様に合成し,顔料の発色が最大となるように顔料の組成を最適化する.さらに,最適化された組成において,顔料の紫外可視近赤外分光反射率と色座標から,色彩の鮮やかさを示す彩度や色の純度を示す色相角を定量的に評価し,現在実用化されている黄鉛(PbCrO4),カドミウムレッド(CdS・CdSe),バーミリオン(HgS),鉛丹(Pb3O4)などとの比較検討を行う.
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