2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of high-temperature superconducting coated conductors with superior mass productivity where defects and impurities function cooperatively
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22K04703
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
元木 貴則 青山学院大学, 理工学部, 助教 (00781113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山 淳一 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20251366)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 積層欠陥制御 / 希土類系銅酸化物高温超伝導体 / 薄膜 / 不純物添加 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類系高温超伝導体(RE123)は90K級の臨界温度を有することから液体窒素浸漬下での通電応用やヘリウムフリーでの磁場応用などに向けて研究開発が進められている。これまでの研究で、RE123配向薄膜材料の作製手法を確立するとともに、RE123材料に積層欠陥が存在することに着目し、後熱処理によって材料形態に依らず普遍的に適用可能な積層欠陥制御手法を開発してきた。当該年度は、積層欠陥制御による高機能化に並行して、強い磁束ピン止め中心となる微細な不純物などの非超伝導領域を薄膜中に導入する手法の開発を進めた。BaMO3のペロブスカイト構造の不純物添加やRE123の銅サイトを置換するNiなどの金属元素をドープすることで、臨界電流特性が改善することを明らかにした。具体的には、積層欠陥制御に関して、成膜後のRE123薄膜に対して300度以下の低温で含水蒸気雰囲気中で1時間以下の短時間熱処理を行うことで、外部磁場を印加いていない環境での臨界電流値が液体窒素温度77 Kにおいて2倍以上改善することに成功した。不純物添加効果については、様々な不純物添加や金属ドープ(Zr,Sn,Hf,Pr,Fe,Ni,Zn等)を試みたが、BaZrO3添加、Niドープがそれぞれ最も効果的であることがわかり、さらに3%のBaZrO3添加と0.1%以下のNiドープを組み合わせることで、さらなる特性改善が見られた。 また、Agを薄膜表面に蒸着してアニールすることで積層欠陥の生成を促進するというこれまでに知られていない現象も新たに見出し、詳細な機構解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
積層欠陥の制御、不純物添加それぞれについて、系統的な研究を通じて希土類系高温超伝導体薄膜の顕著な特性改善が見られている。さらに、これまでに知られていない銀界面を介した新たな積層欠陥の生成促進機構を新たに見出しつつあり、これらを適切に組みわせることでこれまでにない汎用的な高機能化手法の実現が視野に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
積層欠陥および不純物添加を独立に制御し希土類系高温超伝導薄膜の臨界電流特性の改善に成功している。積層欠陥は主に低磁場中で、不純物添加は主に磁場中での電流特性を改善することがわかったので、今後これらを適切に組み合わせることで広い磁場領域での特性改善を実現する手法の開発を目指す。加えて、実用線材に用いられる長尺化可能な金属基板を用いて厚膜を作製し同様の特性改善を進める。また、昨年度新たに見出した銀蒸着による積層欠陥導入促進効果について詳細なメカニズムの解明を試み、これを組み合わせた特性改善指針を探索する。
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Causes of Carryover |
効率的に研究を進めることで消耗品の消費量を想定より削減できたこと、購入予定物品の同等品を中古で調達できたことなどで次年度使用額が生じた。 研究を進める上で不可欠な単結晶基板やボンベ類をはじめとして数多くの消耗品、材料で値上げが通告されており、次年度の使用額が当初の想定を上回ることが確実である。繰越分を含むることで、計画通りに研究を進めたい。
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