2023 Fiscal Year Research-status Report
炭素および珪素系繊維基材へのナノカーボン構造体の創製とその応用
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22K04704
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
山際 清史 帝京科学大学, 生命環境学部, 講師 (20711443)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / ナノカーボン / ナノ粒子 / 繊維 / 電極 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)をはじめとするナノカーボンの合成基材として繊維基材に着目をし、繊維基材であることにより発現する特異的なナノカーボン構造の創製、また種々の応用を見据えたナノカーボン/繊維基材の複合材料の作製を、CVD法および独自の液相合成プロセスによって試みる。 令和5年度は特に、CVD法による炭素繊維基材やステンレスメッシュへのCNT合成および、液相合成プロセスによるCNT/炭素繊維基材の作製とその電極としての特性評価を中心に研究が進められた。CVD法による炭素繊維基材へのCNT合成では、新たな添加剤としてシリカ系ナノ材料に着目をし、炭素繊維基材に予め分散させることでCNTの成長に与える効果を検討した。またCVD法における合成基材としては特に微細ステンレスメッシュ(~300 mesh)の使用も検討をした。微細ステンレスメッシュは柔軟性を有し加工も容易であるため、立体的な構造をもつ基材へのナノ材料の合成とその応用展開が可能と考えた。令和5年度は特に微細ステンレスメッシュから作製された種々の立体構造にCNTの合成を試みた。 液相合成プロセスによるCNT/炭素繊維基材の作製については、コバルト系またはその他の遷移金属系の錯体や塩を合成溶液に溶解し、炭素繊維基材を溶液中で抵抗加熱することで炭素繊維表面へのCNTの合成を試みた。 これらの生成物について電子顕微鏡により形態観察をし、また電子顕微鏡に備え付けの蛍光X線分析装置により分析を行った。特に液相合成プロセスによる生成物については、基材ごと電極に用い、その電気化学的特性も評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CVD法による炭素繊維基材へのCNT合成の検討について、前処理としてシリカ系ナノ材料を表面に予め分散した基材の場合は、CNTの生成促進が確認された。シリカ系ナノ材料が鉄ナノ粒子(本研究ではフェロセン由来、CNTの成長触媒)の形成とCNTの生成に効果的に寄与したと考えられる。また微細ステンレスメッシュ系については、特に正方形のカット片から微小な立方体および容器型の構造を作製し、合成基材として使用した。CVDプロセスを行ったところ、全体にCNTの生成が確認され、線材表面に垂直に配向成長している箇所も多く見られた。また微細メッシュによる立方体と容器は、CNTを表面に生成させることで、内部空間に水溶液を入れても外側への漏れが発生しないことを確認した。これはCNTの撥水性による効果であると考えられる。 液相合成プロセスによるCNT/炭素繊維基材の合成については、コバルト系の錯体を用いた実験において表面に比較的多くのCNTの生成が確認された。炭素繊維基材はCVD法ではCNTが生成しづらい傾向が知られており、興味深い結果である。またその他の遷移金属系の錯体や塩を用いた実験でもCNTや金属粒子の生成が見られたが、系によってはCNTの表面に金属ナノ粒子が多く分散して形成している様子が電子顕微鏡により観察されたものもあった。このような金属ナノ粒子/CNTを触媒材料として捉え、その特性の評価も展開した。例えば、液相合成プロセスによって作製された金属ナノ粒子/CNT/炭素繊維基材を、基材ごと電極に用い、メタノールを含む電解液中においてその電気化学的なメタノール酸化特性を評価したところ、金属ナノ粒子の種類によってはメタノールの電気化学的酸化に由来する電流が見られ、当該ナノ粒子がメタノール酸化触媒として機能すること(触媒活性を有すること)が示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の繊維基材へのCVDおよび液相合成プロセスによる、CNTをはじめとするナノカーボン合成を通し、基材の素材(組成)や形状、表面構造がナノカーボン生成や複合材料としての特性に与える効果についての統一的な見解を提案する。 令和5年度の研究の今後の展開については、特に炭素繊維基材系では、ナノカーボン/炭素繊維基材の電極材料としての用途を念頭に、電気化学的な特性評価を中心に進める。液相合成プロセスによる金属ナノ粒子/ナノカーボン/炭素繊維基材については、金属ナノ粒子の種々の触媒特性も評価していく。CVD法における微細ステンレスメッシュ系では、特に立体型のCNT/微細メッシュについて、例えば内部に電解液を入れるタイプの高表面積の微小電解セルや、また外部の気体を取り込む電気化学反応(酸素還元など)を想定した電極などに応用展開を試みる。
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Causes of Carryover |
(理由) 実験試薬や基材等の消耗品の消費量が、当初の想定と比較して令和5年度は少量であったため、その分の差額が生じた。 (使用計画) 令和6年度分として請求した助成金と合わせ、実験試薬等の消耗品および機器・備品の購入を計画している。
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Research Products
(7 results)