2022 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of polymer/nanocarbon composite materials for infrared-driven microactuators
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22K04741
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Research Institution | Chitose Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高田 知哉 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (00342444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 薫明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (40374566)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロアクチュエータ / 温度応答性ハイドロゲル / 赤外線 / ナノカーボン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度には、赤外線誘起発熱に伴って変形するナノカーボン複合材料を試作するため、LCST(下限臨界溶液温度)型の温度応答性を示す材料であるポリ(N-イソプロピル)アクリルアミド(PNIPAM)ハイドロゲルとポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)ゲルからなる積層材料を作製し、赤外線照射に伴う屈曲変形を観察した。この積層材料では、温度上昇・低下に伴う両層の膨潤率変化の差によって変形が引き起こされると考えられており、PNIPAM層への還元型酸化グラフェンの添加により赤外線照射・発熱による屈曲変形が可能であることが知られている。本研究では、光熱変換を担うナノカーボンとしてカーボンナノチューブ(CNT)を用い、赤外線照射に伴う温度上昇および変形挙動に対するCNT添加量の影響を調べた。 NIPAM、PEGDAおよび多層カーボンナノチューブ(MWCNT)分散液から作製した種々のMWCNT添加率の積層材料に赤外光(波長810 nm)を照射し、温度変化および屈曲変位を測定した。MWCNT添加率が低い試料では、赤外線照射時の到達温度が比較的低いが、重量の減少と屈曲変形が同時に観察された。一方、 MWCNT添加率が高い試料ではPNIPAM のLCST付近まで温度が上昇し、更なる重量減少を伴わずに屈曲変形することが観察された。これらのことは、 MWCNT添加率の低い試料では主に水分の蒸発に伴って変形する一方、CNT 添加率の高い試料では PNIPAMの温度応答性に基づく両層での水分移動により変形することを示唆していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイドロゲル積層材料の赤外線応答性に対するMWCNT添加量依存性について、現象の理解及び材料の設計の手がかりとなる知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、MWCNT添加PNIPAM/PEGDAハイドロゲル積層材料の赤外線誘起発熱・変形を観察することに成功したが、赤外線のオン・オフによる可逆的な屈曲・伸長を実現するには至っていない。これまでに行った空気中での赤外線照射条件では、ハイドロゲルからの水の蒸発が無視できず、変形が不可逆的となる。液体の水を要さずに可逆的変形を生じさせる条件を探索するため、湿度の影響について詳細に調べる必要がある。 また、現状では赤外線誘起変形に時間を要し、迅速ではないことが課題である。このことは、MWCNT添加量や分散状態を最適化することで発熱・放熱特性が変化し改善される可能性があるが、材料を構成する層の厚さにもよると考えており、各層の両面での伸縮の差の影響を極力受けない条件下で変形挙動を評価することが必要である。そのために、より薄層化した材料を作製して赤外線照射に伴う温度変化、可逆的変形挙動の評価を行う。
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Causes of Carryover |
旅費の支出が当初想定よりも少なかった。また、計上していた備品の一部を、他の機器で代替し当座のデータを取得することができた。未使用額については、令和5年度での研究に必要な物品費や研究発表のための旅費および論文投稿関連費用に充当する予定である。
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