2023 Fiscal Year Research-status Report
金属ー有機構造体を鋳型にしたシクロデキストリン薄膜の分子吸着動的メカニズムの解明
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22K04751
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Research Institution | Kanagawa Institute of Industrial Sclence and Technology |
Principal Investigator |
水野 陽介 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 化学技術部, 研究員(任期無) (70881704)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | QCM / MOF / 電気化学合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シクロデキストリン系金属-有機構造体(CD-MOF)を鋳型にしたシクロデキストリン(CD)ゲル薄膜の水中での分子吸着動的メカニズムの解明を目指し、分子吸着挙動のリアルタイム評価手法を確立することを目的としている。本年度は、昨年度から課題となっていた本研究の根幹技術となる、電気化学合成法によるCD-MOF薄膜の制御可能な合成手法の確立に注力した。 昨年度実施した、電気化学的に合成された結晶膜は、電極表面の膜の均一性を間接的に示す水晶振動子マイクロバランス法(QCM)のパラメータである共振抵抗値が大きく変化し、QCMの周波数変化から生成重量を測定する上では不適であった。そこで、電気化学合成時に界面活性剤の添加を検討したところ、共振抵抗値の変化が抑制され、SEM観察からも、界面活性剤を無添加の系と比べて平滑な膜を得られていることが明らかになった。また、得られたCD-MOF結晶膜は、電極垂直方位に<110>優先方位で生成することが示唆された。通常、配向したCD-MOF結晶膜を得るためには、電極表面の分子修飾の工程が必要になるため、興味深い結果が得られている。一方で、合成条件上、電気化学的に合成された膜のみを得ることは難しく、洗浄工程中に生成した結晶との明確な分離は不可能であった。 今年度予定していた、分子吸着挙動の検討や結晶膜のゲル化については、根幹技術となる電気化学合成法の問題解決に時間を要したため、検討できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の課題(1)において、前年度の課題となった合成後に結晶が生成し、電気化学合成のみで生成した膜が得られない点について、洗浄工程の見直しなどの工夫を図ったものの完全になくすことはできず、時間を要したこと、また、当初想定していた結晶膜の重量増加にはPtへの水素吸蔵による重量増加が含まれており、両者に優位な差がない条件での合成を検討しており、合成条件の見直しが必要になったためである。課題(1)が根幹技術となるため、それに伴い課題(2)-(4)の実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は前年度に確立したCD-MOF膜の合成方法をもとに、CD-MOF膜修飾電極を作成し、耐水性の向上を目的としたCD-MOF膜のゲル化に取り組む。さらにQCM法を用いた芳香族化合物の分子吸着挙動を明らかにする。具体的には以下2点を行う。 ①CD-MOF結晶膜のゲル化:窒素雰囲気の合成環境において、ジクロリドによる架橋反応でのゲル化法の確立に取り組む。さらにゲル化による膜の結晶構造への影響をSEMおよびXRDにより検討する。 ②シクロデキストリン結晶膜およびゲル化膜の吸着挙動評価:シクロデキストリン結晶によって吸着されることが報告されている芳香族化合物の分子吸着量を水晶振動子マイクロバランス法によって経時的に測定し、分子吸着様式を明らかにする。その際、CD-MOF膜の電気化学合成が完全には制御できていないため、CD-MOF膜の合成前後での周波数変化を窒素雰囲気中で行い、CD-MOF膜の生成重量とすることで解決する。研究計画では、架橋剤であるジクロリドのアルキル鎖長がゲル化膜の分子吸着挙動に与える影響を検討する予定となっていたが、研究の遅れのためジクロリドの種類を絞って検討する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究の進捗が遅れており、外部発表を見送ったため。
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