2022 Fiscal Year Research-status Report
金属ガラスの粘性流動による究極の急冷速度を伴う万能異種金属抵抗溶接法の開発
Project/Area Number |
22K04756
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山本 篤史郎 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (40334049)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 異種金属接合 / 抵抗溶接 / 金属ガラス / アモルファス合金 / 過冷却液体 / ガラス転移 / 粘性流動加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
Zr55Al10Ni5Cu30金属ガラス薄帯をインサート材に用いて,SUS304板材とCP-Ti板材,C1020板材,A1050板材の抵抗スポット溶接を既存の抵抗溶接機と本研究課題で購入した抵抗溶接機を用いて,溶接電流の制御・測定を行いつつ,これまでの実験結果を再現できることを確認した.SUS304/CP-Ti板材の抵抗溶接では,金属ガラスインサート材が過冷却液体にガラス転移して接合母材と密着することにより接合部が急冷されて,母材の混合が抑制されることを複数の実験試料の走査電子顕微鏡観察で確認した.また,継手強度を評価するために行った引張せん断試験結果の再現性が高いことを確かめた. SUS304/C1020板材の抵抗溶接では,熱伝導率が非常に高いため大きな溶接電流を要するC1020板材の溶接が可能であった.金属ガラスインサート材が抵抗発熱源となることで,SUS304とC1020の混合が促進された.さらに,引張せん断試験の結果から,母材の混合により継手強度が高くなること,SUS304/CP-Tiほどではないが継手強度の再現性が高くなることがわかった. SUS304/A1050板材の抵抗溶接では,金属ガラスインサート材を抵抗発熱源とすることで,低融点のA1050だけでなく高融点のSUS304も溶融量が増加して継手強度が向上することがわかった. 継手強度を確保するためには接合母材が混合することが重要であるが,高い熱伝導率を有するため金属ガラスインサート材を用いても母材が溶融しにくいC1020とA1050の場合,SUS304と融点の差が小さいC1020は抵抗溶接時の電極荷重を小さくして接触抵抗を増加させることにより母材の溶融量を限定させ,SUS304と融点の差が大きいA1050では電極荷重を大きくして接触抵抗を小さくして母材の溶融量を制限することにより,高い継手強度を得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,(a) 究極の急冷速度の測定,(b) 究極の急冷速度で溶接できる異種金属の組み合わせの探索,(c) 究極の急冷速度による接合部組織と継手強度の関係の解明,を実施する予定であった.これらのうち(a)はまだ実施できていないが,(b)についてはSUS304ステンレス鋼/CP-Ti,SUS304ステンレス鋼/C1020,SUS304ステンレス鋼/A1050の抵抗溶接を金属ガラスインサート材を用いて実施し,接合母材の違いによる継手強度の影響を調査し,母材の融点が大きな影響を及ぼすことがわかった.特に,母材の融点が高い場合,金属ガラスインサート材が抵抗発熱で過冷却液体にガラス転移し,接合母材を密着・急冷させる効果は複数の試料で観察され,接合部組織と継手強度に類似性が見られた.(c)についても走査電子顕微鏡による接合部の組織観察を終了した.SUS304/C1020とSUS304/A1050については接合部組織が複雑であるため,透過電子顕微鏡観察を行う対象を今後見極める.なお,ここまでの結果について1件の口頭発表と1件の投稿論文発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
SUS304ステンレス鋼板と接合する母材に構造用材料として広く用いられる合金板材を選択し,金属ガラスインサート材を用いて抵抗溶接を行う.具体的には,CP-Ti工業用純チタンではなく,広く用いられているTi-6Al-4V合金とSUS304の抵抗溶接を金属ガラスインサート材を用いて実施する.同様に,A1050工業用純アルミニウムの代わりにA5052など構造用材料として広く用いられるアルミニウム合金とSUS304の抵抗溶接を行う.平行して,接合部に配置する金属ガラスインサート材の間に熱電対を設置し,抵抗溶接時の温度変化を測定する.温度変化から金属ガラスインサート材がガラス転移を生じる様子と,接合母材が混合する場合は付随する大量の発熱を検出し,本研究で想定している抵抗溶接のメカニズムが正しいことを明らかにする.
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