2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on corrosion problems of SUS 304 stainless steel used as bipolar plates for polymer electrolyte membrane fuel cells
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22K04770
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
八代 仁 岩手大学, 理工学部, 教授 (60174497)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 固体高分子形燃料電池 / セパレータ / ステンレス鋼 / 腐食 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体高分子形燃料電池(PEFC)用セパレータ材料としてステンレス鋼が期待されている。本研究では、ステンレス鋼製セパレータを用いて発電したPEFCにおける膜電極接合体(MEA)の汚染状況を、蛍光エックス線分析するとともに、MEAの断面を飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF SIMS)を用いて評価した。併せて、セパレータのアノード側のみに表面処理(TiN-SBR塗布)を行った場合、カソード側のみを表面処理した場合、両面表面処理した場合についても発電試験を実施した。表面処理を全く行わなかった場合、発電特性は最も早く劣化し、1000時間発電後のMEAにはFeやCrによる汚染が明瞭に認められた。MEAの断面をTOF SIMSで分析した結果、FeやCrの汚染は、もっぱらアノード側から生じていることが判明した。ステンレス鋼製セパレータのうち、アノード側だけに表面処理して発電した場合、セル性能の劣化は穏やかであったのに対し、カソード側だけを表面処理しても、セル性能の劣化は抑制できなかった。これらの結果は、ステンレス鋼に対する腐食性は、一般に評価対象とされているカソード側環境より、アノード側環境の方が問題となることを示している。アノード側では水素酸化反応が生じ、電位はカソード側より0.6 V以上低いが、ステンレス鋼にとっては十分な不動態化に至らず、酸化皮膜が不安定化して活性溶解しやすいものと考えられる。アノード側から侵入したステンレス鋼の溶解成分は、プロトン伝導膜に濃縮していることも、TOF SIMS分析から明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
表面処理したSUS304鋼をセパレータとするPEFCの発電特性解析は2022年度と2023年度にかけて実施する予定としていたが、重要な発電試験をほぼ2022年度に実施し終えることができた。 特にセル性能劣化に対して、アノード側とカソード側のセパレータのうち、どちらからの腐食汚染が大きな影響を与えるかを明らかにする、という研究課題に対し、明確にアノード側からの汚染が深刻であることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
SUS304ステンレス鋼を裸のままでセパレータとして使用する場合の腐食によるセル劣化挙動をほぼ明らかにできたことから、今後は表面処理によってこれを抑制する方法の開発に研究の重点を移行する。
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