2022 Fiscal Year Research-status Report
水素還元製鉄炉を想定した流動・伝熱・還元反応シミュレーションモデルの開発
Project/Area Number |
22K04791
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
篠竹 昭彦 帝京大学, 理工学部, 教授 (10373812)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 製鉄 / シャフト炉 / シミュレーション / 伝熱 / 固気二相流 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず固体-気体の伝熱シミュレーションモデルを開発するため、CFDソフトウェアSTAR-CCM+(シーメンス社、CFDソフトであるが固体流れにDEMを用いることが可能)をライセンス購入し、既存のPCにSTAR-CCM+計算環境を構築した。インストールおよび計算環境設定時に不具合が多発したが、ベンダーの技術者とやり取りを繰り返して解決し、計算実行環境を整えた。このソフトを用いて、実験装置として使用する円筒状の領域を対象としてグリッド作成を行い、円筒内に固体粒子を充填して、下方から高温ガスを流して固体を昇温させる実験条件に対応する初期条件・境界条件を設定し、固気伝熱には既往の文献式を使用して計算を試行した。 実験については、予備的に既存の装置を用いて、固体粒子を充填した層に高温のガスを流して伝熱を行う実験を試みた。実際のプロセスは、高温水素含有ガスで鉄鉱石粒子を加熱昇温して還元するプロセスを想定しているが、モデルを検証する模型実験のため、固体粒子は粒径約10mmの鉄鉱石(焼結鉱)を用いたが、ガス側は、水素の代わりにヘリウム、窒素の代わりに空気と、物性値が近いガスで代替する実験を計画した。しかしながら、ヘリウムは高価かつ調達困難であるため、まずは安価かつ調達容易なアルゴンを代わりに使用することとし、空気(コンプレッサーから供給)、アルゴン(ガスボンベから供給)を単独または混合して送風し、気体を加熱して固体充填層に送り、固体の昇温を計測する実験を行った。ガス組成、ガス温度、ガス流量を変更して実験を行った。この予備実験の結果、固体充填層の圧損による流量計での測定流量と実通過流量の相違があることや、ガスの昇温速度の違いが固体の温度上昇に影響するなどの問題点があることが分かり、信頼できるデータを得るための実験方法の改良を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
CFDソフトを用いたシミュレーションモデルの作成については、計算環境の構築において不具合がいろいろ発生し、ベンターーとやり取りして解決していったため予想以上の時間がかかった。実験装置形状の領域での固体充填層を通過するガスによる固気伝熱のシミュレーションを試行できるまでには至ったが、固体流れや還元反応を計算できるモデルには至っていない。 実験については、適切な装置の設計製作に活かすために既存の簡易的な円筒状の実験装置で予備実験を行ったが、実績の概要に記述した課題が発現したため、実験方法の改良を行っている段階である。 また、当初の想定より研究にかけるマンパワーが不足した。具体的には、研究代表者である自分が組織の長を務めているために組織運営業務が多く研究に十分な時間が充てられなかったこと、実験の推進に協力してくれる研究室スタッフ(大学生、大学院生)が少なく研究戦力不足だったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度予定の未達部分を継続して推進していく。 CFDソフトを用いたシミュレーションモデルの作成については、DEMによる固体流れと、酸化鉄の水素還元を組み込んでいく。そののち、当初2年目の研究計画としているガス流量、温度、固体側の粒径や組成などをパラメータとしてそれぞれの組み合わせを変えたシミュレーション(ケーススタディー)を行い、炉内の温度・ガス組成・還元率分布などを計算する。 実験については、予備実験で発現した課題を実験方法の見直しにより改良して信頼できるデータが取れるようにし、その結果に基づき当初計画していた計算モデルを検証するための本装置を設計製作し、シミュレーションモデルの検証を目的とした実験を行う。
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Causes of Carryover |
令和4年度に、モデル開発用の計算機として約20万、模型実験装置一式として約30万を使用予定であったが、研究の進捗遅延により未購入であるため次年度使用額が生じた。計算機については、まず必要な計算機のスペックを見極めるために、ライセンス導入したCFDソフトウェアを既存のPCに導入して計算環境の構築とモデル作成の試行を先に行った。令和5年度に計算に適した速度・性能の計算機を導入する予定で、この費用として使用する。 実験装置についても、最適な装置を設計製作するために、先に既存の装置を用いて簡易的な予備実験を行った。これも予備実験の知見をふまえて令和5年度に装置製作を行う予定であり、その物品費として使用する。
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