2022 Fiscal Year Research-status Report
Control of crosslinked polymer architecture in living radical polymerization
Project/Area Number |
22K04817
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
飛田 英孝 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (30237101)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 架橋高分子 / ネットワーク高分子 / 高分子ゲル / 回転半径 / グラフ直径 / 非ランダム / 普遍性 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) リングフリー構造の範疇で種々の反応系において形成される分岐・架橋構造に対して検討を加えたところ、いずれの反応系においても二乗平均回転半径とグラフ直径の間には単純な比例関係が成立し、比例係数aは、ランダム/非ランダム構造を問わず0.17-0.18という狭い範囲にあり、構造因子の影響(一次分子鎖長、一次高分子間の結合法則)は小さいことが示された。なお、直鎖およびリング高分子では、この値が1/6=0.167となることは既知である。 (2) グラフ理論を活用し、ランダム架橋ネットワークにおける二乗平均回転半径とグラフ直径の関係について検討したところ、サイクルランクrにて分別した成分について、一次高分子の本数・分布にかかわらずリングフリー系と同様の比例関係が成立し、比例係数aはrにより決定されることを見出し、aをrの関数として表す簡便な式を提案した。 (3) 種々の非ランダム架橋におけるネットワーク高分子について二乗平均回転半径とグラフ直径の関係について検討したところ、ランダム架橋高分子の場合と同様に、サイクルランクrにて分別した成分について比例関係が成立し、比例係数はランダム架橋高分子に対する比例係数に定数fを掛けた値となること、さらにfの値は1に近く、その差異は多くの場合5%程度以内であることを見出した。 (4) 項目(1)で示したリングフリー高分子系は、r=0の場合に相当し、(3)の知見は、リングフリー高分子において比例係数の値に対する構造因子の影響が小さいという知見とも合致する。 (5) 項目(3)の知見は、統計的ネットワーク高分子における二乗平均回転半径とグラフ直径の関係に対するrの影響は、一次高分子間の結合法則に依存せず同じ関数で表されることを示しており、普遍的関係(Universality)を表していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度(2022年度)はリングフリー高分子のみを対象に検討を行う予定であったが、(1)ネットワーク高分子に対する検討まで研究が進展し、さらに(2)当初は予想しなかった二乗平均回転半径とグラフ直径の間の普遍的関係式まで提案することに成功したことは、計画以上に大幅に進展していることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究により、「ネットワーク高分子の回転半径は、グラフ直径を用いて推算できる」ことが示された。グラフ直径には三次元構造特性である回転半径に比べ、(1)計算負荷がはるかに小さく、(2)二次元構造として概念化が容易であるため架橋高分子構造の設計・制御に活用しやすいという利点がある。今後、グラフ直径の統計的性質について詳細な検討を加え、グラフ直径を介した回転半径の制御法、さらには、ゲルの膨潤特性との関係について考察を加えていきたいと考えている。
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