2023 Fiscal Year Research-status Report
ソルボサーマル合成均一多孔体を核とするCNT球状高次構造体の合成と等方性機能応用
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22K04819
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
小廣 和哉 高知工科大学, 理工学群, 教授 (60170370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 寛 高知工科大学, システム工学群, 教授 (10389207)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ソルボサーマル反応 / カーボンナノチューブ / 等方性 / CNT-Hair |
Outline of Annual Research Achievements |
CVD反応において、反応炉内に残存する酸素量や水蒸気量などの炉内環境はCNTの成長に大きく影響する。前年度まで使用していた熱CVD装置 (小スケールCVD装置) では、反応炉内の水蒸気や不純物を除去するため、ロータリーポンプとターボ分子ポンプを用い高真空状態を保っていた。しかし、粉末触媒であるFeOx-ZrO2 MARIMOを直接この小スケールCVD装置に入れ高真空状態にする際、粉末が飛散してしまう恐れがあり、粉末試料の飛散は反応炉内汚染やターボ分子ポンプの故障につながる。そのため、小スケールCVD装置を使用する際には粉末の分散液をSi基板上に滴下し、粉末試料が飛散しないように(ドロップキャスト)してからCVD反応を行っていた。しかし、この手法では、CVD反応に使用できる触媒量が限られ、目的物であるCNT構造体の量を確保するのが難しかった。反応のスケールアップには、高真空を必要とする装置ではなく低真空が適している。そこで、ターボ分子ポンプを用いず、ロータリーポンプのみで反応炉内の低真空を保ち、かつ、不活性ガスであるArで反応炉内をフラッシュすることで、低真空状態でも反応炉内を良好な環境に保つことができると考えた。この考えに基づき新規熱CVD装置 (大スケールCVD装置) を立ち上げ、CNT/一段階FeOx-ZrO2 MARIMOのスケールアップ合成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに組立てた大スケールCVD装置では、用いる触媒の量やアセチレンガスの量などの反応条件が小スケールCVD装置と大きく異なるため、反応条件を検討した。その結果、一段階反応で得られたFeOx-ZrO2 MARIMO触媒、含浸法で得られたFeOx-ZrO2 MARIMO触媒ともに、Ar流速 2.0 sccm、アセチレンガス供給時間5分、反応温度730 ℃がCNT成長の最適条件であった。これまで用いていた小スケールCVD装置では一度に得られるCNT構造体の量は約0.5 mgであったが、今回の大スケールCVD装置では60 mg程度のCNT構造体が得られ、100倍のスケールアップに成功した。Ramanスペクトルにより得られたCNTの結晶性を評価したところ、IG/IDは2.21(一段階FeOx-ZrO2 MARIMO触媒)あるいは3.68(含浸法FeOx-ZrO2 MARIMO触媒)となり、両者ともに非常に高い結晶性を示した。また、一段階FeOx-ZrO2 MARIMOから成長したCNTは高密度であり、CNT/FeOx-ZrO2 MARIMO内に質量約50%のCNTが含まれていた。 一方、含浸FeOx-ZrO2 MARIMOから成長したCNTの平均直径は10 nm以下と細く、かつ結晶性が高かった。このように、用いる触媒により成長するCNTを作り分けることが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
一回の反応で100mgに迫る量のCNT構造体が得られたので、得られたCNT構造体の物理的特性や電気的特性を調べることが可能になる。CNT構造体の均一性評価は、走査型電子顕微鏡、FT-IRを用いて評価する。重量評価と比表面積計測によりCNT構造体の密度評価を行う。顕微ラマン分光器を用い次元制約的CNT結晶性を評価する。CNT成長方向が等方的と期待できるため、電気伝導や光学特性の空間等方性を評価する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況により、次年度に使いたいため。
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