2023 Fiscal Year Research-status Report
Effect of additive on the catalytic activity of mixed metal oxide catalyst prepared by thermal decomposition of cyano complex
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22K04831
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90200568)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | シアノ錯体 / ペロブスカイト型酸化物 / 環境触媒 / セリウムイオン / 鉄イオン / コバルトイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCeイオンを含むLa-Co系の複核金属シアノ錯体からのペロブスカイト型複合金属酸化物の調製を行い,令和4年度に検討したCeイオンを含むLa-Fe系の金属シアノ錯体からの酸化物調製との比較から,以下の①~③に関する知見を得た.①原料La1-xCex[B(CN)6] (B = Fe, Co)前駆体(0 ≦ x ≦ 0.3)を500~900 ℃で焼成したFe系試料ではLaFeO3由来 (600~900 ℃), Co系試料ではLaCoO3由来 (700~900 ℃)のXRDパターンが確認できた.Fe系試料ではCeイオン添加量の増加と共に各ピークがシフトしたが,Co系試料ではピークシフトが観測されなかった.この結果から,前駆体からペロブスカイトへ構造変化する際にLaFeO3骨格に比べてLaCoO3骨格にはCeイオンは取り込まれにくいことがわかった.②Co系試料ではFe系試料よりもCeイオンの固溶限界が低く, x≧0.1でペロブスカイト構造由来のピークの他にCeO2に帰属されるXRDパターンが観測された.③x=0.3に固定したLa0.7Ce0.3[B(CN)6] (B = Fe, Co)前駆体を900℃で焼成した試料の水素による昇温還元測定を行った.Fe系試料では700℃以下にFe3+, Ce4+の還元ピークが確認できたが,Co系試料ではCo3+の還元のみで,Ce4+の還元は観測されなかった. 共同研究先の東北大学のグループに焼成時のFe系試料中のCeイオンの価数変化についてX線吸収微細構造測定を依頼したところ,金属シアノ錯体ではCe3+,室温から焼成温度300 ℃程度のアモルファス状態ではCe4+、そしてペロブスカイト型酸化物ではCe3+およびCe4+の混合状態であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は最終生成物であるペロブスカイト型酸化物のBサイトの種類が格子に置換するCeイオンにどのような影響を及ぼすかについて重点的に検討した.得られた試料の物性評価(粉末X線回折測定,X線光電子測定,水素による昇温還元測定)を当初の予定通り実施し,両者の違いを明らかにすることができた.得られた結果は2023年度開催の触媒討論会(2024年3月,横浜国立大学)にて発表をすることができた.さらに,本試料に関して東北大学のグループと共同研究を行い,我々では解明できなかったCeイオンの価数変化が明らかになりつつある.来年度も引き続き共同研究を行うことを両機関で合意している.両機関で得られた成果は2024年8月にハンガリーで開催されるセラミックスの国際会議(依頼講演)にて八尋が成果発表をする予定である. この研究では導入したCeイオンの酸化還元と共存するFeイオン(あるいはCoイオン)の酸化還元が同時に起こるために水素による昇温還元測定の解析が非常に複雑であった.そこで,Ceイオンが安定に格子に存在すると提案されているZrO2-CeO2の複合体に着目し,本研究の比較のために類似の物性評価を行った.その過程で,複合体中のCeイオンの還元挙動において新規な知見を得ることができ,副次的なものではあるが,その結果を2023年度開催のセラミックス協会年会(2024年3月,熊本大学)にて発表した. 以上のように,当初予定された実験が実施されて成果を学会にて発表をすることができたことに加え,新規の事象が見出されたことから,「(2)おおむね順調に進展している」,と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は本研究の最終年度になるためにペロブスカイト型酸化物へのCeイオン導入に焦点を当てて実験を推進する.Ceイオン導入に関してBサイト(Feイオン,Coイオン)の効果が解明できたので,令和6年度はBサイトをFeイオンに固定して,Aサイト(Laイオン~Ybイオンの希土類金属イオン)イオンの影響について検討する.具体的には以下の三項目について検討を行う.(a)原料,溶媒,条件(温度,pH,撹拌時間など)を系統的に変化させ,異種3核金属シアノ錯体前駆体合成に影響を及ぼす因子を明らかにする.(b)得られた酸化物の結晶性を粉末X線回折により調べ,前駆体のどのような物性が結晶性に影響を与えるのかを明らかにする.また,前駆体を500~1000℃で焼成し,物性評価(粉末X線回折測定,X線光電子測定,水素による昇温還元測定)を行う.ペロブスカイト型酸化物格子内のCeイオンの価数の決定は,東北大学のグループの測定結果と本研究室で行う水素による昇温還元測定の両面から検討する.(c)令和5年度に行った溶媒にメタノールを利用した金属シアノ錯体の調製法を検討していく過程で,ある条件下で粒子の形状および大きさがそろった金属シアノ錯体の形成できることを確認している.そこで,このそろった粒子を得るための条件の確立を行う.また,粒子の形状とCeイオンの含有量との関係を調べるとともに,焼成後の試料を同様な方法によって物性評価を実施する. 上記のCeイオン含有ペロブスカイト型酸化物調製および物性評価が順調に進めば,各試料を固体酸化物形燃料電池の電極触媒へ適用し,発電特性を調べていきたい.
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Research Products
(7 results)