2022 Fiscal Year Research-status Report
Visualization of the coordination nanospace by using electron-diffraction structural analysis
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22K04857
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
大谷 政孝 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (20585004)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 金属有機構造体 / 原子分解能電子顕微鏡 / 電子線回折 / 照射損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、原子分解能電子顕微鏡を駆使し、局所的・過渡的に変化する分子空間の構造解析手法を確立することで、配位高分子(PCP)結晶の分子空間が示す物理的・化学的性質の起源を明らかにすることを目指している。計画初年度では、低線量電子線照射下におけるPCPナノ結晶の電子線回折測定条件の確立を目的とした。PCP結晶のような有機分子を骨格構造に含む材料では、電子線照射下での分析において電子線によるノックオンやイオン化による損傷ダメージが避けられない問題であった。そこで、PCP結晶に対する電子線の加速電圧・電子線照射量との関係性を明らかにする目的で、空間構造の異なるさまざまなPCP結晶に対して電子線回折測定を行い、その影響を系統的に評価した。その結果、結晶自身に含まれる分子構造の安定性などよりもPCP結晶内の細孔空間の大きさ(被占有体積)に比例して、電子線照射損傷による結晶の崩壊速度は顕著に速くなる傾向を見出した。また、PCP結晶を構成する分子構造の分子をより大きな電子密度・占有体積を示す重原子に置換することで、電子栓損傷に伴う結晶崩壊速度を遅延できることも明らかにした(Chem. Commun. 2023, 59, 5039-5042, DOI: 10.1039/D3CC00506B)。一連の成果により、低線量電子線照射がPCP結晶に対して経時的にどのような影響を与えるのかを定量的に明らかにすることが可能となり、次年度以降に低線量電子線照射下で電子線回折を利用したPCP結晶の局所構造解析を行うための有用な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の鍵となる原子分解能電子顕微鏡を駆使した配位高分子ナノ結晶の局所構造解析において、その分析の成否を左右する電子線照射条件の検討の段階は、初年度の研究においてほぼ達成された。具体的には、さまざまな空間構造を有するPCP結晶に対して同程度の電子線を照射した際に経時的に起こる損傷を評価する手法を確立し、電子線損傷による結晶崩壊を低減する新たな道筋を示した。また、計画当初に懸念された問題点についても、加速電圧と電子線照射量の関係性を検証したことで解決の見通しがついている。さらに、様々なサイズ・外形に制御された種々のPCPナノ結晶に加えて、広く有機系多孔性結晶の電子線回折測定に同様の電子線照射条件が与える影響も明らかになったことから、研究開始当初に想定した以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の通り、独自の結晶合成手法により作成した局所的な異種界面構造・複合構造を有するPCPナノ結晶について、原子分解能電子顕微鏡を駆使したさらなる局所分析手法を試みる。具体的な評価方法としては、初年度に行なった低線量電子線照射条件での電子線回折を利用して、PCPナノ結晶内に存在するわずかな結晶構造の歪みや違いを明らかにし、局所的な構造情報と物性との関係性をあきらかにする。さらに、それらの結晶に対して電子線エネルギー損失分光法(EELS)およびエネルギーフィルター電子顕微鏡像(EFTEM)を用いた分析も組み合わせることで、PCP結晶内の複合界面に存在する配位構造と電子状態の関連性の解明を目指す。
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