2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K04875
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
畠山 一翔 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 助教 (30773965)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノシート / 構造制御 / グラフェン / 酸化グラフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究目的は、申請者が新開発したエポキシカーボンナノシートを前駆体とし、機能性二次元ナノカーボン材料を次々に開発することにある。2022年度は、1)酸素を脱離させることでグラフェン類似ナノカーボン材料を作製する試み、2)エポキシ基部位に窒素をドープする試み、3)エポキシ基を化学修飾する試み、を行い1)のグラフェン類似ナノカーボン材料の作製において最も成果が得られた。グラフェン化は、レイヤーバイレイヤー法により3層積層させた薄膜を3%水素中で熱処理した後、シート抵抗を測定することで評価した。結果として、300 ℃という比較的低温の熱処理で、4.2 kΩ/sqのシート抵抗を得ることができた。これは、グラフェンの前駆体としてよく用いられる酸化グラフェンを、700 ℃の熱処理したときのシート抵抗(12.8 kΩ/sq)より低い値であった。この結果は、エポキシカーボンナノシートがグラフェンの前駆体として、非常に優れていることを示す。エポキシカーボンナノシートの構造規則性について、XRD、紫外可視吸収およびRaman測定により詳細に議論し、低温熱処理による低シート抵抗の実現は、エポキシカーボンナノシートが炭素欠陥をほとんど含まないこと、高い構造規則性により酸素脱離の温度が狭い範囲に集中していること、が主な原因であると突き止めた。高い電気伝導度は、電池、センサー、触媒などの性能向上に直結するため、本成果はそれらの分野の発展に大きく貢献できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究で、エポキシカーボンナノシートを温和な条件で還元し、低いシート抵抗を得ることができた。これは、これまで酸化グラフェンを用いた研究では達成不可能だった機能性を、エポキシカーボンナノシートを用いることで実現できること意味する。また、その中で、エポキシカーボンナノシートの構造欠陥や構造規則性について詳細を明らかにすることができた。このように、エポキシカーボンナノシートの可能性およびその根拠を示すことができたため、研究は概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022度の研究で、エポキシカーボンナノシートがグラフェン(類似材料)の前駆体として非常に優秀であることがわかった。酸化グラフェンを前駆体とする研究は、触媒、電極、センサー、多機能膜と多岐におよんでおり、エポキシカーボンナノシートも同規模の将来性があると考えられる。今後は、申請者が得意とする、触媒、電極、多機能膜の研究にエポキシカーボンナノシートを導入していく。特に欠陥が少ないという事実から、ガスバリア膜やイオンバリア膜への利用へ発展させていく予定である。また、構造規則性が高いことから、酸化グラフェンでは不可能であった、理論計算の導入が期待できる。今後は、理論計算による構造予測や、IR、紫外可視吸収スペクトルの予測なども行っていく。
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Causes of Carryover |
評価装置立ち上げが遅れ、測定に必要な消耗品購入に充てれなかった。今後は、測定のための消耗品およびサンプル合成に必要な試薬購入に充てる。
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