2022 Fiscal Year Research-status Report
光電変換効率の向上を目指した振電相互作用制御のための理論研究
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22K04914
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
藤田 貴敏 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (70767970)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光電変換過程 / 電子状態計算 / 量子ダイナミクス / 時間分解分光 / 有機薄膜太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では、大規模電子状態計算・量子ダイナミクス法・分光理論を統合することにより、光電変換過程を解析するための新しい計算手法を提案する。光電変換過程における振電相互作用の役割を解明することにより、光電変換効率の向上のための物質設計を提案することを最終目標とする。本年度は下記の項目についての研究を行った。 (1)大規模電子状態計算と量子ダイナミクス法を接合するプログラム開発を行った。より具体的には大規模電子状態計算プログラムのABINIT-MPにより導出した励起状態ハミルトニアンのデータを読み込んで、Kubo-Anderson熱浴による確率的シュレディンガー方程式法により実時間発展を行うプログラムの開発を行った。 (2)(1)の実時間発展シミュレーションを基盤として、分光理論を統合することにより、非線形分光シグナルを計算するためのプログラムの整備を行った。より具体的には、励起状態波動関数の実時間発展から双極子モーメント演算子の多時間相関を計算することにより、3次応答関数を計算するためのプログラムを整備した。 (3)応用対象として有機薄膜太陽電池のP3HT/PCBMについて電荷分離ダイナミクスとポンプ-プローブ分光の解析を行った。有機薄膜太陽電池の光電変換過程は励起子状態→電荷移動(CT)状態→電荷分離(CS)状態と起こるが、中間状態であるCT状態と自由キャリアを生成するCS状態をスペクトルで区別することは困難であった。そこで、電荷分離ダイナミクスとポンプ-プローブ分光を詳細に比較することにより、CT状態とCS状態を区別するためのスペクトルの解析方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は光電変換過程の実時間ダイナミクスや時間分解分光を解析するための理論開発・プログラム整備を目標とした。目標としていた電子状態計算法・量子ダイナミクス法・分光理論を統合したプログラムの開発・整備を行えたことから、初年度の研究はおおむね順調に進展したと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度は、初年度に開発した理論・プログラムを振電相互作用を考慮できるように拡張することを目標とする。現状の量子ダイナミクス法では電子状態と振動モードとの相互作用を精度よく考慮できないという問題点がある。今後の開発の方針として、(1)vibronic Hamiltonianを扱う方法と、(2)スペクトル密度に離散的な振動モードを含める方法があり、(1)(2)の両方を検討しつつプログラム整備を進める予定である。また、応用計算については有機薄膜太陽電池系の応用計算を進めるとともに、今後は光合成系にも展開していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により参加を予定していた国際学会・及び国内会議がオンライン開催となったため、予定していた出張を行わなかった。繰り越し予算は次年度の出張や書籍購入にあてる予定である。
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Research Products
(4 results)