2023 Fiscal Year Research-status Report
低抵抗率・長寿命の非蒸発ゲッター(NEG)コーテイング材の開発
Project/Area Number |
22K04936
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
金 秀光 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (20594055)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スパッタリング / 光刺激脱離 / 抵抗率 |
Outline of Annual Research Achievements |
非蒸発ゲッター(NEG)コーティングは、NEG材をチェンバーの内壁にコーティングして、従来のガス源である内壁をポンプに変える技術である。CERNの開発したTiZrV合金は比較的低温で再活性化でき、また低い光刺激脱離(PSD)と電子刺激脱離を有することから、多くの加速器のチェンバーに利用されている。
NEGコーティングには2つの改善すべき課題がある。1つは寿命問題である。NEGは大気開放中に大量の酸素と水分を吸収する。そのため、大気開放を繰り返すと表面が酸素リッチになり、排気性能が低下する。もう一つは抵抗率である。TiZrV膜の抵抗率はCuのそれより2桁も大きく、低エミッタンスのリングでは電子ビームが不安定になる原因である。
申請者らは、Pdの酸素と水分とは反応しないが、水素とCOは吸着する特性に注目し、Pd/TiZrV膜(Pd表面層を導入したTiZrV)を開発した。Pd/TiZrV膜の排気性能は大気開放の影響を受けないことと、水素の排気速度を向上させることを見つけた。また、Pd/TiZrV膜のPSDはTiZrV膜のそれよりさらに低いことも世界初で発見した。続いて、密なPd膜を開発し、PSDがTiZrV膜より低く、また抵抗率はTiZrVより1桁も低いことも確認した。これらのコーティング膜は光源加速器への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは、マグネトロンスパッタ法を用いて、密なPd膜をCuのダクトに作製した。従来のTiZrV合金は、アモルファスでコラムな構造を持つため、その抵抗率が200 microohm・cmと大きい問題がある。これに比べ、今回開発したPd膜は、密な構造を持つ多結晶であることをX線回折とSEM観測に確認した。粒界の界面が少ないことは電気伝導率の向上をもたらす。
DC抵抗率の測定において、密なPd膜は18 microohm・cmの抵抗率を示し、この値は従来のTiZrVのそれより1桁の低下である。加速器への応用を検討した結果、ビーム不安定性を引く起こす電流の閾値は約2倍になる。つまり、従来のTiZrV合金をPd膜に変えることで、加速器への蓄積電流の値を2倍に増加できることである。この成果より、次世代光源加速器への応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
Pd膜の抵抗率は18 microohm・cmで、従来のTiZrVのそれより1桁の低下である。加速器への応用を考えると、電子ビームの電流値を2倍大きくすることになる。
Pdバルクの抵抗率の理論値は10.9 microohm・cmであり、今回得られた抵抗率の値はまだ高い。抵抗率の改善するには、膜への不純物の導入を防ぐことと、膜をもっと緻密にすることが大事である。今後、パルス電源を用いて、成膜条件を改善して、膜の抵抗率をさらに下げる予定である。
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Causes of Carryover |
初年度コロナの影響で出張ができないことと、備品の納期が遅れて今年度購入する予定である。
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Research Products
(4 results)