2023 Fiscal Year Research-status Report
瞬間剥離可能なGaAsエピ層の転位密度低減に向けた層状化合物中間層のステップ制御
Project/Area Number |
22K04957
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
小島 信晃 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70281491)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 化合物半導体 / 層状化合物 / エピタキシャル成長 / 結晶成長 / 分子線エピタキシー / エピタキシャルリフトオフ / X線回折 / 結晶欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、二次元層状化合物バッファを介してSi基板上にGaAsをエピタキシャル成長し、層状化合物の劈開により成膜したGaAs層を薄層剥離することで、III-V族化合物半導体デバイスの大幅な低コスト化を目指している。層状化合物上に成膜するGaAs層の高品質化が課題であり、層状化合物の表面ステップが、GaAsのエピタキシャル成長に与える影響を明らかにすることを本研究課題の目的にしている。 本年度は、Si(111)微傾斜(オフ方向:[11-2])基板上にGaSe/InSe層状化合物バッファを成膜し、その上にGaAsを成膜した試料の結晶性評価をX線回折により行った。Si基板表面、およびGaAs 成膜前のGaSeバッファ層表面には、Si基板の[-110]方向に沿った表面ステップが形成されており、成長過程に影響を与えると考えられる。X線回折測定の結果、GaSe膜、GaAs膜の結晶軸がSi基板の結晶軸に対して、それぞれ0.72度、0.97度、基板のオフ方向である[11-2]方向に傾いていることが分かった。さらに、GaAs結晶には異方的な歪みが残留しており、GaAsの結晶格子は、表面ステップに沿った[-110]方向に縮み、ステップ方向の[11-2]方向に伸びていることが分かった。これらの結果は、各ヘテロ接合界面において、ステップ端の結合が成膜核として重要な役割を担っており、界面での格子定数差が結晶軸の傾きと異方的な歪みの要因であると推定された。結晶軸の傾きは比較的大きな半値幅をもって分布しており、GaAsの結晶性低下をもたらしている。したがって、層状化合物上に成膜するGaAs層の高品質化のためには、ファンデルワールスエピタキシーが可能な層状化合物であっても、表面ステップを成長核とする場合には、各ヘテロ接合界面における格子定数差を考慮した材料設計が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
層状化合物上にGaAsをエピタキシャル成長させるためには、層状化合物の表面ステップ端を結晶核として利用することが有効である。本年度は、当初の予定通り、GaSe層状化合物上に成膜したGaAsの結晶性を評価することで、ステップ端の結合が成膜核として重要な役割を担っていることを確認し、GaAs層の高品質化のためには、各ヘテロ接合界面における格子定数差を考慮した材料設計が課題であることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果で、GaAs層の高品質化のためには、各ヘテロ接合界面における格子定数差を考慮した材料設計が課題であることを示すことができた。次年度は、本成果を基に、層状化合物バッファ層の材料構成を改善して、本研究課題の目標であるGaAs層の結晶性と各ヘテロ接合界面での表面ステップとの関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
近年、真空部品メーカーにおける部材不足による製品の長納期化が継続しており、本研究の成膜実験に必要な真空部品が年度内納品で発注できず、115,511円の次年度使用額が生じた。次年度は、成膜実験で使用する材料費として、本予算を使用する予定である。
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