2022 Fiscal Year Research-status Report
水素結合系に特有な凝集誘起発光機構の理論的探究と分子論的起源解明
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22K05015
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山崎 祥平 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90570177)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 量子化学計算 / 励起状態 / プロトン移動 / 円錐交差 |
Outline of Annual Research Achievements |
インディゴとその異性体であるエピンドリジオンの間で発光特性の違いが生じる原因を分子レベルで明らかにするため、それぞれの分子の単量体について、励起状態におけるポテンシャルエネルギー曲面の量子化学計算を実行した。いずれも色素分子であり、可視光を吸収して励起されるが、インディゴでは励起後にほとんど蛍光を発しないのに対し、エピンドリジオンでは強い蛍光が放出されることが知られている。本研究における計算の結果、インディゴについては、励起状態においてほぼエネルギー障壁なしで分子内プロトン移動が起こる反応経路が見いだされた。さらに、プロトン移動後の分子構造において、励起状態と基底状態のポテンシャル曲面間の円錐交差に比較的低いエネルギーで到達することが分かった。これらの結果は、インディゴの励起状態において、プロトン移動、並びに円錐交差を介した無輻射失活が効率的に起こり、これが蛍光消光の原因になっていることを示唆している。また、一連の過程において、インディゴ分子が平面構造を維持することも明らかとなった。一方、エピンドリジオンの計算については、分子内プロトン移動のポテンシャル曲面がインディゴに比べて大きな反応障壁を示すとともに、円錐交差のエネルギーも非常に高くなった。しかも、円錐交差の分子構造は、インディゴとは異なり、平面から大きく歪んだ構造となることが分かった。これらの結果は、エピンドリジオンではインディゴと同様のプロトン移動および無輻射失活は起こりにくく、代わりに平面構造において光化学反応を伴わない蛍光を発することを示唆している。以上の成果は、インディゴとエピンドリジオンにおける発光特性の違いをよく説明するとともに、今後の研究でこれらの分子の凝集状態における発光機構について考察を行うための有用な情報となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色素分子の光化学反応について量子化学計算を実施し、その発光機構に関する有用な成果を得た。なお、この成果に関する論文を現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
インディゴ・エピンドリジオン以外の分子について発光機構に関する量子化学計算を遂行するとともに、多量体の光化学過程についても計算を開始する予定である。
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