2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K05054
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
佐々木 俊之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, テニュアトラック研究員 (20762066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 久子 愛媛大学, 理学部, 研究員 (20500359)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | キラリティー / 振動円二色性分光法 / 有機塩 / 共結晶 / 多成分結晶 / 相転移 / 放射光 / 機械化学的合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、結晶のキラリティーの有効利用を目指した外部刺激によるキラリティー制御を目的としている。結晶のキラリティーの起源は、結晶構造解析によって原子レベルで解明できる。この利点を活かすことでキラリティー変換機構の解明が可能となり、キラリティー可変結晶材料の開発にもつながる。 当該年度は、アキラル分子からのキラル結晶創出を達成した。興味深いことにこの結晶は、温度変化によって単結晶状態を維持したまま構造相転移を示し、キラリティーのスイッチングが生じることを見出した。 一方キラル分子を用いたキラル結晶を合成して結晶構造解析を行ったところ、1つの結晶中で右巻きと左巻きの水素結合によるらせん構造が共存していることが分かった。それぞれのらせん構造では同じ分子キラリティーであるR(またはS)を持つ分子のみが含まれるため、これらのらせん構造はジアステレオマーの関係にある。これまでの右巻きまたは左巻きのみのらせん構造と比較することで、結晶中でのらせんの左右選択性に関する要因の解明が期待できる。 さらに、2022年度から行っているすりつぶし(機械化学的合成)による有機塩や共結晶などの多成分結晶の合成では、複数の化合物において溶液からの結晶化とは異なる結晶構造を形成していることを見出した。市販のX線回折装置ではこのような粉末状の結晶試料から単結晶X線構造解析を行うことは困難であるが、今回、SPring-8のBL40XUで高輝度のX線を利用することで、数μm程度の極微小な単結晶からの構造解析に成功した。本成果は、機械刺激による特異な結晶構造形成を利用した結晶のキラリティー制御可能性とともに、そのような極微小結晶試料の評価には、電子線回折(microED)だけでなく放射光による単結晶X線回折測定も適用可能であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに、ジアステレオマーの関係にある左巻きと右巻きのらせん構造の両方が含まれたキラル結晶の創出に成功している。また、研究分担者および共同研究者との協力や放射光施設SPring-8の活用により、複数のキラル結晶について分光学的キラリティー評価およびX線結晶構造解析に基づいたキラル変化機構の解明を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見つかったキラル結晶について、固体状態での赤外光領域または紫外・可視光領域の円二色性分光法による分光学的キラリティー評価を進める。さらに、分子設計としてはアントラセンなどの発光性部位を導入し、光機能とのカップリングを進める。
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