2022 Fiscal Year Research-status Report
2次元物質中の欠陥構造の精密制御による電気伝導・発光への影響の解明
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22K05056
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
高井 和之 法政大学, 生命科学部, 教授 (80334514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 康志 東京電機大学, 工学部, 助教 (20833114)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グラフェン / MoS2 / TaS2 / イオン照射 / 水素センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に実施・出版したグラフェンへのB+,N+イオンの照射による欠陥導入と化学修飾による伝導キャリアの符号,濃度,散乱の制御についての実験手法にもとづき,2次元物質へのスピン軌道相互作用の導入または変調を狙って,グラフェンおよび遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)の中でもスピン,軌道の自由度と発光に強い相関が知られている半導体であるMoS2へ重元素であるAu+およびI-イオンの照射を行い,Raman分光,電気伝導度の評価を行った.Au+,I-照射ではそれぞれ電子,ホールキャリアのドーピングが観測され,これらはRaman分光においても支持された.今後,Au+照射MoS2を中心にPLの測定を行うことにより,重元素導入効果を調べる.また,スピン反転プロセスを与えると期待されるFe+についてもMoS2に照射を行い円偏光PLの測定を開始した.さらに金属的2次元物質であるTaS2に対して予備的に水素吸着実験を行ったところ,CDW相転移を挟んで電気伝導への影響が顕著に異なることを見出した.これは以前確立した層数制御を通じたCDW相転移温度の制御と組み合わせることにより新たな原理にもとづく水素センサーが構築可能であること示しており,論文出版により結果を公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
TaS2へのイオン照射により導入した欠陥への分子吸着による欠陥化学構造の制御を行うための予備的な実験により,水素吸着による電気伝導への応答性がTaS2のCDW相転移により極端に変化することを予想外の結果として見出した.そのほかの計画についても順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
MoS2へのAu+,Fe+照射量を系統的に変化させて,電気伝導,円偏光PLへの影響を引き続き調べていく.また,計画されたTaS2のAr+照射により欠陥導入を行い分子吸着と組み合わせることによりCDW相転移温度の変調を試みる実験を実施する.
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Causes of Carryover |
研究が当初の予想以上に進展し,触媒活性評価の実験を前倒して実験するため前払い請求を行ったが,次年度に計画されていた実験の本格的な実施までには至らず,前払い請求額のほとんどを執行しなかったため.次年度に計画されていた計画を再び当初の予定通り実施する.
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