2022 Fiscal Year Research-status Report
Electronic-structure analysis of SOFC materials by synchrotron radiation soft X-ray spectroscopy
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22K05059
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
朝倉 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (80435619)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 固体酸化物形燃料電池 / 遷移金属酸化物 / 電子状態 / 軟X線分光 / 空気極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、コジェネレーションシステムとして実用の進んでいる固体酸化物形燃料電池(SOFC)のさらなる性能向上を目的として、主に空気極(正極)材料の電子状態を放射光軟X線分光を用いて詳しく調べ、電子状態の観点から既存材料における酸化物イオンの伝導の様子や酸化還元反応の解明に取り組んでいる。 SOFCの空気極材料であるLa1-xSrxCo1-yFeyO3-d (LSCF)について、電解質に用いるCe1-xGdxO2-d (GDC)とのナノコンポジット化を行うと、電極性能が向上することが知られている。これまでに電子顕微鏡観察などの手法を用いた界面構造の確認なども行われているが、2022年度は、このLSCF/GDCナノコンポジットとLSCF単体の試料に対して軟X線吸収分光測定を実施し、元素選択的に電子状態の差異を詳しく調べた。LSCF単体の試料と比べると、ナノコンポジット試料のCoの価数が低くなっており、この電子状態の差異が活性に寄与している可能性が判明した。Feについては、価数は変わっていないものの、Feと周辺のOの配位環境がLSCF単体の場合から若干変化していることが分かり、局所構造に与えるナノコンポジット化の影響を確認できた。これらのCoおよびFeの結果に対して、電荷移動多重項計算というスペクトル解析を行っているところである。計算結果から、Feのスペクトルの差異については、結晶場分裂の大きさが違うことに起因することが確認できている。OとGDCのCeについても同様の測定を行っており、関連試料のスペクトルなどを参考にして検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、LSCF系の材料に対して放射光軟X線吸収分光を用いた電子状態解析を実施し、良好な結果を得ることができた。これまでSOFC分野であまり行われていなかった軟X線分光とスペクトル計算を行うことで新規な知見が得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は組成などを変えた同系統の試料の測定や、軟X線吸収分光以外の手法、例えば光電子分光を用いた解析に着手していく。さらに、高温環境下やガス圧制御下でのオペランド測定の開発について検討を行う。また、得られた成果については、論文発表や学会発表を進めていく。
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Causes of Carryover |
主に旅費関連で、コロナ禍が続き予定していた国際会議(XAFS2022、オーストラリア)への出席を見送ったことと、所属機関の近隣の高エネルギー加速器研究機構のマシンタイムが多く取れたため、遠方のSPring-8や九州シンクロトロン光研究センターへの旅費が圧縮でき、差異が生じた。国際会議については、2023年度に、XAFS2022と類似の放射光の国際会議ICESS15(フィンランド)に参加し、放射光分析の最先端の情報を得るとともにLSCFの内容で研究発表を行う計画である。また、オペランド測定系の構築など、真空部品や特殊セルを中心に物品費に活用していく予定である。
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Research Products
(1 results)