2022 Fiscal Year Research-status Report
生体反応中間体によるπ結合活性化を基盤とする多連続複素環骨格の一挙構築
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22K05063
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鍬野 哲 東京工業大学, 理学院, 助教 (50733531)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヨウ化セレネニル / 生体反応中間体 / セレノ官能基化 / ポリエン環化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヨウ化セレニネル(R-SeI)は生体内で甲状腺ホルモン活性化に関わる重要な中間体として提唱されている。ヨウ化セレニネルを用いたπ結合活性化を基盤とする連続環化反応の開発を目指し、2022年度はヨウ化セレニネルと単純オレフィンとの反応についてその平衡挙動を調査した。平衡反応の熱力学パラメーターの導出を目指し、過去に所属研究室で開発されたBpq-SeIとシクロヘキセンとの付加反応について温度可変1H NMRを測定した。温度可変測定を行った結果、付加反応の平衡が室温付近では原系側に、低温では生成系側に偏っていることが明らかとなった。さらに、得られたデータを元にvan’t Hoffプロットを解析した結果、熱力学パラメーターとしてΔH = -9.8 kcal・mol-1、ΔS = -31 cal・mol-1・K-1の値が得られた。これらの値はヨウ素分子とエチレンとの反応における各値と類似しており、ヨウ素分子と同様に、ヨウ化セレニネルがオレフィンへの外部求核剤の導入に適していることが示唆された。得られた知見を元に、環状オレフィンに対する酸素求核剤と窒素求核剤の導入反応を検討し、様々な環状オレフィンのオキシセレン化とアミノセレン化を達成した。また、セレノ官能基化によって生じたかさ高いセレニドの更なる変換について検討し、セレノキシド脱離によって脱セレン化が進行することを見出した。予備的な検討として、窒素求核部位をもつポリエンの連続環化反応を検討したところ、窒素上にカルバメート系の保護基を導入した基質を用いることで、目的の連続環化体が中程度の収率で得られることを見出した。次年度ではさらなる収率の向上を目指し、反応条件をさらに精査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨウ化セレニネルと単純オレフィンとの平衡反応の熱力学パラメーターを導出し、ヨウ化セレネニルが外部求核剤の導入に適していることを明らかにできたため。また、窒素上にカルバメート系の保護基を導入した基質を用いることで、目的の連続環化体が中程度の収率で得られることを見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
連続環化反応について、さらなる環化体の収率向上を目指し、窒素上の保護基や溶媒を精査する。また、連続環化体からの脱セレン化反応を検討する。セレノキシド脱離を介した脱セレン化によってセレネン酸が生じるが、所属研究室ではセレネン酸からヨウ化セレネニルへの変換反応を見出しており、触媒的にヨウ化セレネニルを再生する条件も検討する。
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Causes of Carryover |
購入を計画した消耗品がコロナ禍の影響で手に入らず購入できなかったため。次年度に代替品の購入に使用する。
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