2023 Fiscal Year Research-status Report
低バンドギャップをもつ螺旋分子の創成および機能創出
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22K05080
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣戸 聡 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (30547427)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アザヘリセン / 近赤外吸収色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度における我々の研究は、新規アザヘリセンの合成と、曲面分子の新たな合成経路の開発に焦点を当てた。この研究は、2022年度に発見されたアザヘリセンオリゴマーの結果に基づいており、Donor-acceptor-donor型のアザヘリセンの合成に成功した。これらの化合物は、近赤外領域まで吸収を示すことが確認され、有機エレクトロニクス分野における応用の可能性を広げるものである。 さらに、窒素架橋のπ共役分子をクロスカップリング反応により合成することにも成功し、酸化によって非対称構造を持つヘリセンを合成する新しい方法を開発した。この過程で、DDQとの反応を利用して歪んだπ共役分子を合成することができることも発見された。これは、分子の形状が電子的特性に与える影響を理解する上で重要な知見である。 また、m-terphenylとalkyneの反応を利用したcascade反応により、曲面分子を効率的に合成する新たな経路を見出した。この方法は、従来の合成法と比較して、より簡便で、多様な曲面分子の合成に応用できる可能性を持っている。 これらの成果は、日本化学会の春季年会で発表され、学界からの注目を集めた。現在、これらの研究成果をまとめた論文を執筆中であり、近い将来、国際的な学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの主要な目標は、近赤外領域に吸収する色素の開発であった。今年度はその達成のためにアザヘリセンを用いたdonor-acceptor-donor型分子の合成に成功した。この合成法の最大の特徴は、acceptor分子を異なるものに置き換えることで、分子の光化学特性を調整できる柔軟性にあり、特定の応用に最適な特性を持つ色素を設計することが可能になる。また、今年度はさらに新規のアクセプター性を持つazaheliceneの合成も実現しており、これを使用して、より簡便で安定した近赤外領域に吸収する曲面分子の合成に向けた研究を進めている。 また、研究の過程で従来合成が困難であった曲面分子を簡便に合成できる新規反応を見出した。この新しい合成法は、従来の方法では合成が困難であった曲面分子を、より簡単に、かつ効率的に合成することを可能にする。この手法を用いることで、ボウル型分子に位置選択的に様々な官能基を非対称に導入することが可能になり、これによって、新たな光化学特性を持つ分子の開発が期待できる。 これまでの研究成果は、すでに学会で発表しており、近く論文発表する予定で執筆を進めている。以上の進捗状況は、当初想定していた状況より進んだものであり、順調に研究が推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで近赤外領域に吸収を示す螺旋分子の合成を実現した。今後はこれらに水溶性を付与する、もしくはナノコロイド状にすることにより、生体内で活用できる色素に変換していく。その上で細胞毒性や標的選択性について細胞試験を用いて明らかにする、生体プローブとしての応用や、近赤外領域だけでなく可視領域の光をうまく捕集できる光増感型デバイスを作成し、それを利用した水素発生触媒の開発へつなげていく。実際これらについては共同研究を進めているものもあり、一定の成果を得ている。今後はこれらと、2023年度に見出した新たな曲面分子の開発法を発展させることにより、曲面分子の材料展開への可能性を探っていきたい。
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Causes of Carryover |
2023年度に購入予定であった物品費の一部について、2023年度採用した研究員の研究奨励費によって購入した試薬を共用することによって削減した。また、参加予定であった学会の参加を日程の都合によりキャンセルしたことで2023年度の予算と差が生じた。また、共同研究を現在展開しているが、年度をまたぐ必要があったため、その費用を2024年度で捻出することにした。2024年度はこの共同研究実施に係る、研究打ち合わせ等に旅程費用と、新たに合成に成功した色素の大量合成および材料展開のための試薬購入費に充てる予定である。また、年度末に老朽化した機器が不良となり、その修理および買い替えに係る費用も繰り越して2024年度に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)