2022 Fiscal Year Research-status Report
Functionalization of Simple Arenes Enabled by pi-Coordination
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22K05104
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
武藤 雄一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (50453676)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アレーン錯体 / クロム / ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で取り上げるアレーンクロム錯体[Cr(arene)(CO)3]については、合成法こそ古くから知られているものの、遷移金属触媒を用いるC-H官能基化に対する反応性はほとんど未知である。まず電子豊富な単純アレーンであるo-キシレンやアニソールのクロム錯体[Cr(arene)(CO)3]をモデル基質として、C-H官能化反応を開発することとした。 イリジウム触媒を用いるアレーンのホウ素化は、一般に酸化的付加反応が触媒回転制限段階であるため、電子不足のアレーンに対して反応が進みやすい。アレーンを[Cr(CO)3]に配位させると、その電子密度が減少するため電子豊富なアレーン基質でも効率よくホウ素化できるのではないかと考えた。まず、o-キシレン錯体[Cr(o-xylene)(CO)3]錯体とB2(pin)2のモデル反応を検討した。イリジウムやコバルトなど、アレーンのホウ素化に有効であることが知られているいくつかの触媒を検討したが、対照実験から、そのような金属触媒を必要とせずに反応がうまく進行することがわかった。これまで、遷移金属触媒を必要としないアレーンのホウ素化反応は、求電子的なホウ素化試薬、frustrated Lewis pair、および光照射条件下によってのみ達成されており、この結果は興味深い。添加剤の簡単なスクリーニングにより、炭酸カリウムが最も効率的であることがわかった。次に、クロム錯体から漏出する可能性のある少量のクロムが反応に影響するのではないかと考え、触媒量の[Cr(acac)3]を添加したところ、2 equivのB2(pin)2を用いた場合に収率90%程度でホウ素化生成物が得られた。反応基質として[Cr(o-xylene)(CO)3]ではなくo-キシレンそのものを用いたところ、生成物は全く得られず、アレーンのπ配位が重要であるということを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル反応としてクロムアレーン錯体のホウ素化の開発に成功した。クロム錯体の適用範囲も調べてあり、電子不足アレーンや立体障害のあるアレーンのクロム錯体は、ホウ素化の効率が悪いことがわかった。 このように、当初の計画のように、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次に、重要なステップであるクロムカルボニル前駆体錯体[Cr(η6-arene precursor)(CO)3]とアレーン基質との交換反応を、C-H官能化に必要な反応条件下で検討する。現在までの成果に基づいて、o-キシレンを用いるアレーン交換/C-H ホウ素化をモデル反応とする。[Cr(CO)3]前駆体と アレーン基質との交換とC-H官能基化に必要な反応条件を調べる。アレーン交換の条件とC-Hホウ素化反応自体の条件のバランスをとることに 焦点を当て、どちらも効率良く進行する最適条件を明 らかにする。
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Causes of Carryover |
年度末の試薬類ガラス器具のために確保していたが、予想を下回ったため。新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から学会がオンラインのみに変更になるなど、旅費の使用がなかった。繰り越し分を合わせて次年度に適切に使用する計画である。
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