2022 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of novel binaphthyl-type chiral catalysts
Project/Area Number |
22K05114
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐古 真 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (20804090)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | キラルボリン酸 / 不斉有機分子触媒 / ビナフチル構造 / 不斉非対称化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度中は、ホウ素原子を含むビナフチル型有機分子触媒の開発と応用について研究を実施した。ボロン酸(RB(OH)2)やボラン(R3B)に加えてボリン酸(R2BOH)を有機分子触媒とする反応開発が注目されているものの、”キラル”ボリン酸触媒に関する研究は未開拓である。そこで、ボリン酸の二つの炭素置換基を工夫すれば触媒活性の精密制御や不斉環境の構築が出来ると考えた。 ビナフタレン構造は多くの不斉有機分子の骨格として利用されており、モデル化合物としてビナフチル型キラルボリン酸を設計した。まず、市販の光学純粋な(S)-BINOLから調製したトリフラート誘導体を、Pd触媒を用いてボリル化し、ビナフチル骨格の2’位にピナコラートボリル基を持つ化合物を合成した。その化合物をPhLiで処理し、目的のキラルボリン酸の合成に成功した。当該キラルボリン酸は市販のBINOLから4段階で効率良く合成でき(総収率81%)、光学純度も保持されていた(>99% ee)。また、その絶対構造をX線結晶構造解析によって明らかにした。本合成法を応用し、ホウ素原子上やビナフチル骨格上に種々の置換基を持つキラルボリン酸誘導体を約20種類合成した。 ボリン酸はジオールやアミノアルコールと脱水縮合し、求電子剤と容易に反応する活性な四配位のボラート種を形成することが知られている。実際にキラルボリン酸とmeso-1,2-ジオールをアセトニトリル中で混合し11B NMRを測定したところ、ケミカルシフト値の推移から四配位のボレート種の形成が推測された。本活性化機構を基に、meso-1,2-ジオールのベンジル化による非対称化においてキラルボリン酸を触媒として用いたところ、94%収率と37% eeで生成物が得られ、中程度ながらキラルボリン酸による不斉誘起が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたビナフチル型キラルボリン酸の合成に成功し、それらの誘導体合成も実施できた。また、キラルボリン酸の不斉有機分子触媒としての機能を評価し、メソ-1,2-ジオールの不斉非対称化において不斉誘導が確認された。現在のところ、キラルボリン酸触媒の合成と応用に関する研究は研究計画書通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で得られた実験結果と量子科学計算の結果から、ボリン酸触媒と反応基質の錯体構造を予想し、不斉発現機構を推測している。本考察を基に、新たなボリン酸触媒の構造を設計する。また、当初の研究の目的の通り、本触媒は空気中の酸素や湿気に対して比較的安定であった。本化学的特徴を活かし、現在は、水分子を用いる三成分の不斉触媒反応の検討を進めており、良好な萌芽データが得られている。今後は本反応を中心に、触媒構造の改変と新規反応開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
触媒の合成が比較的効率よく達成でき、また光学純度を調べるのに必要な分取用キラルカラムは研究室で保有しているカラムで実行可能であったため、物品費の繰り越しがあった。また、参加した予定していた学会の一部を見送り、旅費の繰り越しもあった。今年度請求分により、次年度に新たな化学薬品やキラルカラムの購入、関連学会での情報収集に研究費を充てる。
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