2022 Fiscal Year Research-status Report
酸素分子活性化能を有する二核鉄錯体の創製および反応性の制御
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22K05127
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古舘 英樹 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (40332663)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 二核鉄(III)ペルオキソ錯体 / 酸化反応 / O-O 結合活性化 / C-H 結合活性化 / 酸素原子移動反応 / 可逆的なO-O結合の開裂と再生 / 二核鉄(IV)オキソ種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に下記の研究を行った。 1)キノリルメチル基とピリジルメチル基をサイドアームに有する二核化配位子 (L1) およびピリジルエチル基とピリジルメチル基をサイドアームに有する二核化配位子(L2)を新規に合成し,それらを用いて二核鉄(II)錯体[Fe2(L1 or L2)(Ph3CCO2)]2+ を合成した。いずれの鉄(II)錯体も-20度で酸素分子と反応し,ペルオキソ錯体を生成することがわかった。これらペルオキソ錯体の外部基質に対する酸化反応性を検討した結果,9,10-DHAやチオアニソールに対して酸化反応性を有することが分かった。 2)立体的に嵩高いジフェニルイミダゾリル基をサイドアームに有する二核化配位子(Ph-bpmp)の二核鉄(III)ペルオキソ錯体 [Fe2(Ph-bpmp)(PhCO2)]2+ の外部基質に対する酸化反応性を速度論的研究により調べた。このペルオキソ錯体は,25度のアセトニトリル中では完全に分解するまでに 9 日かかる が,基質としてキサンテンを添加するとペルオキソ錯体に由来する 642 nm の吸収は擬一次速度則に従って素早く減衰した。興味深いことに,キサンテンを含む全ての基質において擬一次速度定数 (kobs)は基質の濃度を高くすると飽和挙動を示した。基質の酸化反応メカニズムとして,ペルオキソ錯体 の O-O 結合が開裂して生成する二核鉄(IV)オキソ錯体が酸化活性種として水素原子引き抜き反応による C-H 結合の活性化や酸素原子移動反応を行うことが提案された。また,その酸化反応では,二核鉄(IV)オキソ錯体による基質の酸化に先行して可逆的なO-O結合の開裂と再生が存在し,律速段階は二核鉄(IV)オキソ錯体と基質の二分子反応から,二核鉄(III)ペルオキソ錯体の二核鉄(IV)オキソ錯体への変換へとシフトする興味深いメカニズムが提案された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な二核化配位子を有する二核鉄(III)ペルオキソ錯体の合成に成功し,これらが酸化反応性を有することがわかった。また,可逆的酸素化能を有する二核鉄(III)ペルオキソ錯体と外部基質の反応では,二核鉄(IV)オキソ錯体による基質の酸化に先行して可逆的なO-O結合の開裂と再生が存在することが提案され,この系はこれまでにない可逆的な酸素分子の四電子酸化還元が可能であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
可逆的酸素化能を有する二核鉄(III)ペルオキソ錯体で新たに提案された可逆的な酸素分子の四電子酸化還元能を同位体ラベル実験によりさらに明らかにしていく。また,新規に合成したペルオキソ錯体についても速度論的研究により,外部基質との反応を明らかにする。さらに,キノリルメチル基をサイドアームに有する二核化配位子の二核鉄(III)ペルオキソ錯体でも速度論的研究により,外部基質との反応を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたラマンスペクトルやメスバウアースペクトルの測定のための出張がサンプル準備の都合上できなかったたため。
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