2023 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素を炭素源とするβ-アミノ酸の金属フリーな環境調和型電解合成
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22K05182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仙北 久典 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50241360)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電解カルボキシル化反応 / 二酸化炭素 / 有機電解合成 / α-フェニル-β-アラニン / β-フェニル-β-アラニン / アスパラギン酸誘導体 / ジアリールメタノール / ジアリール酢酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族エナミド(α-アセチルアミノスチレン)の電解ジカルボキシル化反応によるアスパラギン酸誘導体の合成反応では、生成物をジカルボン酸として単離精製することは困難であった。今年度は、基質汎用性を優先的に確認することとし、各種芳香族メチルケトンより合成したエナミド類に関して検討を行った。その結果、芳香環上に塩素原子を有するエナミドからは目的のアスパラギン酸は確認できなかったが、芳香環上にo-Me(66%)、p-CO2Me(72%)、m-NHAc(49%)、p-OMe(71%)、p-OC8H17(78%)を有するエナミドからは相当するアスパラギン酸誘導体が、カッコ内に示した1H NMR収率で生成していることを確認し、本反応の汎用性を示すことに成功した。一方、芳香環上が無置換のジカルボン酸を無水酢酸で処理することにより相当する酸無水物とした後にカラムクロマトグラフィーにて単離精製したところ、電解ジカルボキシル化と酸無水物形成の2段階ではあるが、収率58%でアスパラギン酸無水物を得ることに成功した。 一方、同様の芳香族エナミド(α-アセチルアミノスチレン)を基質として反応系内に少量の水存在下に二酸化炭素をバブリングしながら定電流電解を行うと、エナミドのアルケン部位の末端炭素原子上にのみ二酸化炭素が固定化されたモノカルボン酸であるβ-フェニル-β-アラニンを得ることができた。スチレン類のβ位選択的な電解ヒドロカルボキシル化反応は数例が知られているが、エナミドを用いたアミノ酸の合成への応用は世界で初めての例である。 また、白金陰極、マグネシウム陽極を備えた一室型セルを用い、DMSOを溶媒として室温で二酸化炭素をバブリングしながらベンジルアルコールの定電流電解を行ったところ、ベンジル位のC(sp3)-OH結合を還元的に開裂してベンジルアルコールから一段階でフェニル酢酸を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エナミドの電解ジカルボキシル化反応は、すべての生成物の単離精製には至ってはいないものの、芳香環上が無置換の基質では相当するアスパラギン酸誘導体を酸無水物へと変換し、収率58%で単離精製に成功した。また、様々な基質を用いても同様の反応が1H NMRの収率ではあるが効率よく良く進行していることは確認済である。従って、従来の分液操作での塩基抽出を用いる手法では単離精製が困難であったアスパラギン酸誘導体の粗生成物を酸無水物とすることで、様々な基質由来のアスパラギン酸誘導体の単離精製も可能になると考えている。 また、同じ基質であるエナミド類の電解カルボキシル化反応において少量の水を加えて反応条件を微調整することによりβ-フェニル-β-アラニンの合成にも成功している。さらには、電解カルボキシル化反応による新たなβ-アミノ酸類合成の発案・準備実験にも取り掛かっており、本手法が二酸化炭素からβ-アミノ酸類を合成する非常に有効な手法であることを明確に示すことが予想されている。 一方、C(sp3)-OH結合の電解還元的開裂による二酸化炭素の捕捉によるベンジルアルコールからフェニル酢酸の環境調和的一段階合成にも成功している。 以上のことから、おおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
エナミド類の電解ジカルボキシル化反応によるアスパラギン酸類の合成に関しては、反応条件ならびに基質適応範囲の検討は1H NMR収率での検討をほぼ終えている。今後は、無置換のアスパラギン酸誘導体を酸無水物として単離した手法を用いてDMFと支持電解質であるBu4NBF4を含む粗生成物を無水酢酸で処理することにより酸無水物としてカラムクロマトグラフィーによる単離を検討し、基質適応範囲における単離収率を決定する。また、水存在下におけるエナミド類の電解モノカルボキシル化によるβ-フェニル-β-アラニン類の合成についても反応条件の検討は終わっており、次年度は単離精製方法ならびに基質適応範囲に関して検討を行う予定である。また、β-アミノ酸の新規合成に関する知見を明示するための基質や実験条件の検討などを行う。 一方、ジアリールメタノールの電解カルボキシル化によるジアリール酢酸の一段階合成について、ベンジルアルコールの電解反応条件から微修正したのちに、基質適応範囲の検討へと展開していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度末に開催された電気化学会第91回大会ならびに日本化学会第104春季年会に、修士2年の学生が参加・発表予定であったが、日程等の関係から不参加となったため予定していた学生分の交通費ならびに参加登録費の支給が不要となり次年度支給額が生じた。 2024年度当初予算(物品費600,000円、旅費400,000円)と合わせて、2023年度に生じた次年度支給額222,800円は学会参加もしくは研究打合せの旅費、参加登録費ならびにガラス器具・実験器具・試薬等消耗品の物品費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)