2023 Fiscal Year Research-status Report
高分子らせんダイナミクスの自在制御に基づいたキラル機能性材料の開拓
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22K05213
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 武司 京都大学, 工学研究科, 講師 (20624349)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | らせん高分子 / 精密構造制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、合成高分子の高次構造制御について活発な研究が展開され、特に高分子主鎖の動的らせん不斉制御に基づいたキラル機能性材料の開発に期待が集まっている。しかしながら、キラル機能性材料としての使用に耐えうるレベルで安定かつ精密に構造制御することのできる合成らせん高分子は限られている。本研究ではイソシアニドの重合により合成されるらせん高分子の側鎖構造を刷新することで、高分子らせんダイナミクスの自在制御に基づいた実践的なキラル機能性材料を開拓することを目的としている。 2023年度はイソシアノ基の炭素原子を同位体ラベル化したモノマーを合成し、パラジウムおよびニッケル錯体を重合開始剤として用いた重合条件の検討をおこなった。単座および二座ホスフィン配位子を有するパラジウム錯体を用いた場合には重合速度が遅く、副反応が一部進行することがNMR解析により示された。二座ホスフィン配位子を有するニッケル錯体を用いると室温においても重合は円滑に進行し、重合度分布が広いものの目的の高分子が得られた。NMR測定より、得られた高分子が溶媒により異なる動的配座を形成し、ジクロロメタン溶媒中では単一の配座が支配的であるのに対し、クロロホルム溶媒中では2種類の配座が共存することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、キラル機能性材料としての使用に耐えうるレベルで安定かつ精密に構造制御できる合成らせん高分子の開発である。その実現に向けた新規らせん高分子の合成法の確立は着実に進んでおり、高分子主鎖の動的配座に関する知見も得られていることから、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見を基に、重合開始剤の構造を再検討し、分子量分布よく定量的にリビング重合を進行させる条件を確立する。また、側鎖構造の異なる高分子を合成し、側鎖の官能基構造や嵩高さが動的らせん構造に与える影響について検討する。アミド基を導入することで、ユニット間相互作用の向上によりらせん構造が安定化することが期待される。高分子のらせん不斉制御としては、アキラル側鎖を導入したらせん高分子と入手容易なキラル化合物との分子間相互作用によるらせん不斉誘起をおこなう。側鎖にキラル化合物と相互作用する置換基を導入することで、少量のキラル化合物による効率的らせん不斉誘起を達成する。また、モノマーユニット間の協働作用を利用することで、低光学純度のキラル化合物から完全な一方向巻きらせん構造が誘起される、不斉増幅を伴ったらせん不斉誘起を達成する。さらに、各種分光学的手法と計算化学的手法を駆使することでらせん不斉が誘起される機構の解明に取り組み、より効率的な動的らせん不斉制御を実現する高分子構造を再設計する。
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