2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of visualization of intermolecular hydrogen bonding of linear polymers in the crystal state
Project/Area Number |
22K05217
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 園 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 教授 (40304745)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高分子結晶 / 電子密度分布マップ / 最大エントロピー法(MEM) / 放射光粉末X線回折データ / パラクリスタル格子乱れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大型放射光施設SPrig-8の高輝度X線を利用して収集した高SN比の粉末X線回折データと情報理論に基づく期待値の推定法であるマキシマムエントロピー法(MEM)を応用して、高分子(ポリマー)結晶の電子密度分布を3次元で可視化し、通常の結晶構造解析では不明瞭な結晶構造の乱れと非共有結合性分子鎖間相互作用(分子鎖間水素結合)を可視化可能な精密構造解析法を新たに確立することを目的とする。 2022年度は、最も単純な1次構造を有する線状高分子である高密度ポリエチレン(HDPE)の粉末回折データを用いた構造解析法を再検討した。HDPEの粉末回折プロファイルと2次元回折パターンは、SPring-8の理研ビームラインで計測した。回折強度プロファイルについて、最初に結晶成分と非晶成分にピーク分離した後、結晶由来のBragg反射について直方晶系で指数付けを行なった。hkl反射ピークの位置からd-spacingを求め、格子定数a,b,cを決定した。hkl反射の観測強度Iobs(hkl)と上記の格子定数を用いて、既知の直方晶構造モデルを初期構造としてSHELEXで結晶構造を精密化した。精密化後の計算結晶構造因子Fcal(hkl)の位相角Φcal(hkl)を使って、Iobs(hkl)から求めた観測結晶構造因子Fobs(hkl)の実数項と虚数項を計算した。一連の反射のFobs(hkl)の実数項と虚数項を用いてMEM解析を行い、それらの最適解として3次元電子密度分布マップを得た。 一方、試料に含まれる結晶の配向性を2次元回折パターンで評価した。結晶由来のDebye-Scherrerリングの強度を調べたところ、方位角に対する強度変化が小さかった。このことから、本研究で用いた試料に含まれる結晶はランダム配向(無配向)状態であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、最も単純な1次構造を有するポリマーの粉末回折データを用いて電子密度分布解析法を検討することができた。本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、生分解性ポリエステルを試料に用いて、ポリマー結晶に対するMEM解析法を検討する。最初にポリ3ヒドロキシブチレートやポリブチレンサクシネートについて、高結晶性試料の調製法を検討する。高結晶性でグレインサイズの揃った良質な粉末試料が得られたら、放射光を利用して高SN比の粉末回折プロファイルを計測する。各反射の強度評価では、重なって観測される異なる反射の強度を決定する妥当な方法や結晶の配向性を考慮した強度補正法について検討を行う。結晶構造解析では、初期構造として用いる既知の結晶構造モデルを精密化して観測結晶構造因子とその位相角を求める。一般的にポリマーの結晶はパラクリスタル格子を形成することが知られており、回折ピークの巾には第二種の格子乱れと微結晶サイズが反映される。精密化後の結晶構造モデルの計算構造因子の誤差に第二種の格子乱れの情報が反映されると考えられる。これらの点を考慮して、ポリエステル結晶に対するMEM解析法を検討する。
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Research Products
(3 results)