2022 Fiscal Year Research-status Report
可逆的付加開裂連鎖移動重合へ影響を及ぼす開始剤ラジカルによる反応機構の解明
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22K05218
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
三宅 祐輔 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (20728050)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 流通型電子スピン共鳴(ESR)分光法 / 可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合 / 光重合開始剤 / 副反応 / 反応性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はこれまでに考慮されてこなかった可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合の精密性に与える開始剤の影響を明確にすることである。そのために、本重合法の反応を支配するRAFT剤と、開始剤ラジカルとの反応で生じるラジカル由来の信号をとらえ構造を決定し、更に反応性を数値的に評価する手法を新たに確立することを目指す。ラジカルの直接観測と構造解析が可能な電子スピン共鳴分光法を測定法として用い、速度論的評価のために精確な強度決定が可能な測定系の構築を行う。開始剤ラジカルとRAFT剤、モノマーとの競争反応の速度論的な評価を達成し、これらの化合物の構造的特徴がRAFT重合に与える影響を明らかにすることを目指す。 実施計画に基づき、まず、定量評価が可能な測定系の構築を目指した実験を行った。測定系の取り外しが可能な流通系構築、測定セルの位置および照射光に対する角度の再現などに注意を払い、絶対強度の再現性達成が困難なESR装置において10%程度の誤差を達成している。当初の計画と順番を変更し、量子化学計算による開始剤ラジカルとRAFT剤、モノマー、それぞれとの反応性の熱力学的評価を開始した。流通型ESR装置による反応速度定数評価、量子化学計算による熱力学的評価を1組の開始剤、RAFT剤またはモノマーに対して行った。当初より着目していたリン中心ラジカルと対になるベンゾイルラジカルについて、開始剤ラジカルに対するRAFT剤との反応性がモノマー以上である、すなわち、RAFT重合へ開始剤ラジカルが影響を与える可能性を示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた予定と一部変更があったが、光照射下における流通系とESR装置を組み合わせた測定系の構築を行い、10%程度まで信号強度誤差をおさえることができた。誤差低減を目指した系の改良は今後も進めたいが、予測される速度論的数値差の評価において充分使用が可能であるといえる。初年度に進める予定であった流通型温度可変ESR装置の構築は、当初考えていたものよりも有効な手法が他分野の研究において取り入れられていたことを知ったため、情報および構築材料の収集を含め、次年度へ変更することとした。 当初の計画では次年度に行う予定であった量子化学計算による反応の熱力学的な解析を今年度に進めることができた。 また、構築した測定系および量子化学計算的手法を用いて一組の化合物(各種1種類の開始剤とRAFT剤またはモノマー)について速度論的、熱力学的評価を行うことができた。これは当初計画では次年度に実施予定の内容であった。 当初計画とは異なる順序ではあるが、全体計画として進展が見られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、構築を行った測定系を異なる構造を持つRAFT剤、モノマーへと適用し、反応中間体ラジカルの精密構造解析、速度論的評価のデータ収集を中心に研究を進める。また、フロー型温度可変ESR装置の構築を行う。実際に用いられている研究室において測定系の見学を行い、設計図の構築を行う。一部、使用材料の加工が必要となるため、所属機関の技術職員への協力を依頼する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末開催の学会参加に伴う旅費が, 当初見積もりを行っていたものを下回る額であったため余剰が生じた。 次年度の研究計画において, 当初計画していたものとは異なる装置設計に必要な加工部品の購入, 見本となる装置の見学に必要な旅費として使用したい。
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