2022 Fiscal Year Research-status Report
Valence control of magnesium hydroxide: possibility of hydroxide electronics
Project/Area Number |
22K05268
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
市村 正也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30203110)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水酸化マグネシウム / 薄膜堆積 / ドーピング / 水酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで絶縁体とみなされてきた水酸化マグネシウムMg(OH)2を、半導体・導体としてエレクトロニクスに応用する可能性をひらく。Mg(OH)2は極めて安価豊富な元素で構成されており、透明エレクトロニクス材料としてのメリットは大きい。これまでの研究経験に基づき、化学的手法でMg(OH)2薄膜を堆積する。電気化学堆積法に加え新しく開発したドロップ蒸発法を用い、伝導型および伝導度制御のため不純物元素を添加する。伝導型制御を確立させたのち、pn接合ダイオードを作製し、「水酸化物エレクトロニクス」の可能性を実証する。 2022年度は、電気化学堆積による銅Cu添加Mg(OH)2単層のデバイス応用を試みた。堆積溶液中のCuイオン濃度1.5~3 mMで、透明でp型伝導性を持つMg(OH)2が堆積する。これをp型層とする透明なpn接合ダイオードを作製した。n型層には、透明なn型半導体ZnO層を用いた。スズ添加インジウム(ITO)基板上に、まずCu-Mg(OH)2を堆積し、その上にZnOを電気化学堆積にて積層した。素子は良好な整流性を示し、Cu-Mg(OH)2がp型ワイドギャップ半導体として透明エレクトロニクスに応用可能であることを実証することができた。この成果をもとに、学術論文一編を発表した。 合わせて、ドロップ蒸発法によるMg(OH)2堆積を行った。これまでに無添加Mg(OH)2の堆積に成功しているが、不純物添加の手法はまだ確立していない。2022年度はドナーとして働く可能性がある鉄Feを添加する実験を行った。化学分野での過去の研究例を参照し、Mg(OH)2膜をFeイオンを含む水溶液に浸すことでMgとFeが置き換わることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績で述べたように、Cu-Mg(OH)2をp型層としたダイオードを作製できたが、本研究の最終的な目標はMg(OH)2あるいは水酸化物だけを用いて素子を作製することである。2022年度は電気化学堆積にてn型のCu-Mg(OH)2層を堆積する研究を行った。Cuイオン濃度が1 mM以下の時はn型伝導性を示すことが分かったが、再現性や膜特性の安定性に乏しいという問題がある。炭酸イオンがその原因となっている可能性を考え、炭酸イオンを意図的に添加する実験を現在行っている。(空気中の二酸化炭素が炭酸イオンとなって膜に取り込まれることが知られている。)炭酸イオンはn型伝導性を抑制し、p型伝導性を促進する効果があることを示唆する結果がられているが、まだ確証は得られていない。 ドロップ蒸発法によるMg(OH)2堆積膜への不純物添加については、Feが添加されることを確認したものの、電気抵抗率の減少など電気的性質の制御はできなかった。Fe不純物がどのような形態で導入されているかを明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
電気化学堆積については、p型層の堆積には成功しているので、n型層の堆積と評価に重点を置いて研究を進める。現在調べている炭酸イオンの効果については早急に結論を得たい。さらにn型伝導性を増すため、不純物の添加も検討する。Cuは堆積時の触媒としても働くため透明均一な膜の堆積には必要だが、アクセプタとしても働くため、n型伝導性のためにはドナーとなる不純物が必要である可能性がある。Feなど三価のイオンとなる元素がドナーの候補と考えられる。n型層を得る条件を把握したら、Mg(OH)2のpnホモ接合ダイオードの作製を試みる。 ドロップ蒸発法については、まだ不純物添加技術が確立されておらず、p型n型いずれの伝導性も確実には得られていない。まず再現性良くMgを不純物と置換する手法の確立が必要であり、それができたら不純物の電子的性質を見極め、伝導性制御につなげたい。現在まではFeの添加を試みてきたが、必要に応じ他の不純物の添加も検討する。
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Causes of Carryover |
申請では学会参加を想定して旅費を計上していたが、オンライン参加にしたため出張は行わなかった。(学会はハイブリッド開催だった)また、純水装置消耗品などに別予算を使用したため、消耗品の購入が予定より少なかった。2023年度は学生とともに積極的に学会参加出張をしたい。
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