2022 Fiscal Year Research-status Report
セラミックスナノシートの活用に変革をもたらす抗菌コーティング
Project/Area Number |
22K05270
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鎌田 海 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (90315284)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | セラミックナノシート / バイオフィルム / 抗菌作用 / セラミックス・高分子複合膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では抗菌・抗ウィルス活性を持つセラミックスナノシートの合成に取り組み、医療現場における「医療機器を介した感染予防」や、新型コロナウィルスにより変容した社会生活でグローバルに渇望される「不特定多数が触れる場所の感染予防」に有効な抗菌材料を開発する。病原体の物理的破壊に適した異方性形状を有する無機層状材料(セラミックスナノシート)を病原体の不活性化に効果のある有機分子で修飾する。さらに、透明な合成高分子のモノマーとナノシートを溶剤中で混合し、固体材料に塗布および高分子化させることで抗菌・抗ウィルス性表面膜を形成する。結果的に医療機器の感染防止や不特定多数が触れる箇所を原因とした接触感染防御に有効なコーティング材を開発する。 今年度はリン酸ジルコニウムナノシート(ZrP NS)およびアクリル樹脂(PMMA)からなる複合透明膜を合成し、日和見菌(E. ColiあるいはS. Aureus)に対する抗菌効果を調査した。合成した複合膜は可視光線に対して高い透明度を示し、既存の固体材料表面に塗布することで、材料の外観を損なうことなく表面抗菌化できる可能性を示した。さらに、この膜は繰り返しの抗菌持続性を示し、とくにS. Aureus に対して抗菌効果が高い結果を得た。菌に暴露した後の複合膜表面の観察を行ったところ、多くの菌の付着が観察され、その一部には正常時と比較して変形した形状の菌が見られた。したがって、膜表面で菌の死滅が起こっていること、また死滅菌による膜の汚染が、抗菌効果の持続効果を低下させることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿った研究実施と予測される結果については予想以上の進捗状況であった。一方で、学会や論文など成果発表の面で想定からやや遅れており、次年度は研究実施と成果発表をバランスよく取り組む必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果に基づき、今後は複合膜表面の死滅菌による汚染の抑制方法の開発が必要と判断した。したがって、次年度はナノシートの基材となるPMMAの重合時に親水性モノマー(アクリル酸エチル(EA))を加え、高分子表面への菌付着に強い影響があると考えられる親疎水性と抗菌性の関係を調査する。アセトン中で剥離したZrP NSを含むMMAモノマーとEAの混合物の光重合を行いEA-PMMA-ZrP膜を作製する。EAの添加がPMMA-ZrP膜の抗菌性に及ぼす影響を主にS. Aureusを対象に濁度法およびコロニーカウント法で評価する。 一方、PMMA膜表面状態がバイオフィルム形成に及ぼす影響を調べる。例えば、上述のように生菌や死滅菌の付着は膜の表面組成に依存すると考えられため、膜の親疎水性を接触角計で接触角を計測することで、表面親疎水性と抗菌性の関連を調べる。また、表面の形状(凹凸)、亀裂や組成分布など物理状態がどのようにバイオフィルム形成(菌付着)に影響するか詳細に検討する。これらの成果を元に、、膜の化学組成(EA濃度、ZrP濃度)や表面状態と菌の死滅効果の相関関係を明らかにし、複合膜の抗菌性向上のための知見を蓄積する。
|
Causes of Carryover |
必要な消耗品の納期が予定より遅れ、4月以降に納品となったため、相当額が次年度使用となった。当該額はこの消耗品の購入に当てる。
|
Research Products
(1 results)