2023 Fiscal Year Research-status Report
海洋天然物を起点とする膵臓ガン選択的増殖阻害剤の創製と薬剤耐性メカニズム解明
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22K05339
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
古徳 直之 立命館大学, 薬学部, 准教授 (20362618)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 海洋天然物 / 抗ガン剤 / 作用メカニズム / 膵臓ガン / 創薬化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に確立した、2-aza-8-thiabicyclo[3.2.1]octane骨格の構築法を、aleutianamineの不斉全合成に適用すべく、indolequinone誘導体を基質に用いた検討を行った。一方、同骨格の構築に関して、従来はスピロ環化からの転位による反応機構を想定していたが、反応条件の変更によって直接七員環が構築されていることを示唆する結果を得た。また、一連の検討において新規骨格を有する化合物が得られたため、同骨格とピロロイミノキノン骨格を融合した抗ガンリード化合物への展開を目指した検討も開始した。 Makaluvamine Jを基盤とした創薬化学研究については、昨年度に確立した全合成法を応用して種々の誘導体を合成し、各種ガン細胞に対する細胞毒性試験を行なった。その結果、細胞毒性の増強および細胞間の選択性に関わる置換基の導入位置および種類に関する重要な知見を得るとともに、天然物より強力かつ高選択的に膵臓ガン細胞の増殖を阻害する新規化合物を見出した。 関連する研究として、makaluvamine類と類似の三環性骨格を有し、抗潜在性結核活性を示すアルカロイド3-(phenethylamino)demethyl(oxy)aaptamineの合成研究も継続して行った。独自に見出した酸化的分子内環化反応について、基質の適用範囲の拡張を目指して、種々の類似化合物を用いた反応を検討した。結果として非天然形の誘導体の合成に成功するとともに、適用できる基質の構造から、同反応の反応機構を考察した。 以上の成果について、学会発表および論文発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Makaluvamine Jについては、当初の計画通りに合成研究が進展し、各種誘導体の合成と活性評価から、構造活性相関に関する知見を得ることができた。Aleutianamineについては全合成には至っていないものの、部分的な骨格構築には成功しており、一部構造を改変した「擬天然物」の合成に向けた検討を開始できている。Makaluvamine Jに関する研究で得られた知見と合わせて、本研究の最終目的である、膵臓ガン選択的な抗ガンリード化合物の創出や、作用機序の解明に向けた検討を進める準備は整ってきたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Aleutianamineについては、引き続き不斉全合成に向けた検討を進めるとともに、類似骨格を有する擬天然物の合成と活性評価を進める。Makaluvamine Jについては、誘導体合成をさらに進め、有用な抗ガンリード化合物の創出を目指すとともに、これまでの検討で得られた構造活性相関に関する知見を踏まえ、標的分子探索のためのactivity-based probeの合成と、これを用いた結合タンパク質解析を開始する。また、関連研究として進めてきたaaptamine誘導体についても、構造の類似性から膵臓ガン細胞に対する細胞毒性が期待できるため、これまでの検討で合成を完了した天然物および各種誘導体についても細胞毒性試験を行い、活性発現のメカニズムを解析する。
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Causes of Carryover |
化合物の安定供給の観点から、本研究の基盤となるピロロイミノキノン誘導体の合成について一部ルートの変更を行い、以前よりも効率的な合成が可能となったため、物品費を想定より少額に抑えることができた。これを次年度に有効活用し、本研究の推進につなげたい。
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