2022 Fiscal Year Research-status Report
Searching methods for next generation turn-on photosensitizer
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22K05347
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金森 功吏 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (90633446)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光増感剤 / turn-on光増感能 / タンパク質光ノックダウン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光線力学治療法における光過敏症の低減や、標的タンパク質の選択的光ノックダウン法の開発を目指し、標的タンパク質に結合した際にのみ光増感する次世代型光増感剤の設計法および探索法の確立を目的としている。筆者はこれまでに種々の蛍光色素の合成と蛍光特性の評価ならびに、リガンドをコンジュゲートした蛍光プローブ開発を行ってきた。これらの知見と高い増感能を示す色素分子を用いることで、turn-on型光増感剤の開発を進めている。用いている蛍光色素は励起状態で分子内ねじれを起こし無蛍光性となるが、この原理を応用し標的タンパク質結合時に分子内ねじれを抑制し、光増感能を発現する新規分子の開発を行っている。 これまでに、分子内ねじれが抑制される高粘度溶媒(グリセロール)中において、光増感能を示す色素分子を見出していた。初年度では、光増感能の評価を進める中で、光増感剤自体の光による自己分解を見出した。そこでその分解機構と分解が抑制される構造探索を行った。その結果、一重項酸素と光増感剤がジオキセタン形成を経由して分解していることを示唆する結果を得た。この中間体は電子密度に応じて形成されやすさが変化することが過去の報告から示唆されていたため、本研究でも種々の置換を試したところ、光安定性が向上した誘導体を見出した。 また、筆者のこれまでの知見をもとに、種々のがんで発現が亢進しているGLUTを標的とし、GLUTに結合した際に特異的に光増感能を示す光増感剤の開発を進めており、本年度ではプロトタイプのリガンド光増感剤コンジュゲートの合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、新規turn-on型光増感剤の評価を詳細に行い、一連の化合物の粘度依存的光増感能を明らかにすると共に、新規光増感剤の光に対する安定性を調べ、置換基ごとの特性に関する知見が得られた。これらの知見をもとに、turn-on光増感特性や光に対する安定性の両方に優れた化合物の探索を進めている。現在は筆者がこれまで取り組んできたGLUTを標的としたturn-on型蛍光プローブ開発の知見を元に、プロトタイプのturn-on光増感剤を用い、蛍光プローブと類似した骨格のリガンド-光増感剤コンジュゲートの開発を進めている。初期の合成検討において、新規光増感剤をリガンドへ導入するための縮合反応を固相(アミドレジン)上で行った。しかし、強酸性条件で固相からの切り出しと脱保護を行ったところ、新規光増感剤がほぼ全て分解されることが分かった。そこで、リガンドをあらかじめ固相から切り出し、液相中にて縮合反応を行った。種々検討した結果、目的物を得る条件を見出した。現在は、このリガンド-光増感剤のコンジュゲート体の量上げを進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針は、(1)リガンドをコンジュゲートしたturn-on型光増感剤の合成と、それを細胞に添加し標的タンパク質存在下で特異的に光増感能をonにできるか検証すること、(2)turn-on増感能の向上(より標的にフィットするような光増感剤誘導体の探索、光増感剤そのもの光増感能の向上、光耐性の向上)の2つを予定している。 まず(1)について、前項で述べた通り現在までに目的のturn-on型光増感剤(リガンド-光増感剤のコンジュゲート体)の合成ルートの確立を達成している。今後は、このプロトタイプリガンドコンジュゲートの量上げ合成を行い、細胞に添加して、GLUT存在下で特異的に光増感能を示すか検証を進める。 (2)について、現在までに種々の新規光増加剤の光増感能の評価を進める中で、置換基の種類によっては光によって自己分解することを見出した。一方で分解しにくい誘導体も見出しており、これらの知見をもとにさらなる化合物の設計・合成とturn-on光増感能や光安定性の評価を行い、turn-on増感能と光安定性に優れた誘導体開発を進める予定である。これらの実験で得られた光増感剤についても、リガンドとのコンジュゲート体を合成し、細胞を用いた光照射実験を進めていく予定である。また、ドッキングシミュレーション等のin silicoの手法も取り入れ、標的タンパク質との結合時に分子内回転を効果的に抑制できる構造の探索も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は新規光増感剤の合成とその光化学的な評価が中心であったが、種々の化合物の合成が予定よりもスムーズに進んだため、合成にかかる経費に余裕が生じた。一方で、一連の結果から、標的タンパク質結合時の光増感能の向上の必要性が予想され、さらなる合成検討が必要と考えられる。この予算は次年度以降に必要な合成検討に当てさせていただく予定である。
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