2022 Fiscal Year Research-status Report
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対する薬剤耐性改変剤の探索と作用機序研究
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22K05359
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
奥田 賢一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70624245)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / 薬剤耐性 / 抗菌薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性菌の蔓延は世界的な問題であり、新たな抗菌薬開発への積極的な取り組みが求められている。本研究では、院内感染の主要な原因であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の薬剤耐性を破綻させる化合物=薬剤耐性改変剤のスクリーニングと作用機序の解明を行う。これまでに研究代表者らは、特定の遺伝子を欠損させることによりMRSAの薬剤耐性が破綻し、β-ラクタム薬感受性となることを明かにしている。このことから、薬剤耐性を破綻に導く化合物を取得し、β-ラクタム薬と併用することにより、MRSA感染制御が可能になるのではないかと着想した。本研究は、既存の抗菌薬の有効活用や持続可能な抗菌薬開発の実現に向けた新たな研究基盤の形成を指向するものであり、MRSA薬剤耐性機構の包括的理解と薬剤耐性菌の蔓延阻止につながる成果が期待される。
今年度は、スクリーニングにより取得した薬剤耐性改変剤の作用機序を明らかにするために、薬剤耐性改変剤の標的分子に突然変異が生じた耐性変異株の取得を試みた。MIC未満の濃度のオキサシリンと薬剤耐性改変剤を含む選択圧下において長期間培養を行い、オキサシリン/薬剤耐性改変剤への感受性が低下した耐性変異株を取得した。その後、得られた耐性変異株の全ゲノムシーケンスを行い、変異部位を同定したところ、タンパク質Xをコードする遺伝子にアミノ酸置換をもたらす変異が確認され、薬剤耐性改変剤の標的がタンパク質Xである可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐性変異株の取得により薬剤耐性改変剤の標的分子を推定できたことは大きな進展であったといえる。標的分子を同定するために耐性変異株を取得する手法は一般的であるが、薬剤の濃度や培養条件などの最適化が必要となる。条件検討には時間を要したが、様々なパラメーターを検討することにより目的の耐性変異株を取得することができ、次世代シーケンサーを用いた全ゲノム解析により変異部位を同定するに至った。さらに、推定標的分子の遺伝子過剰発現株では薬剤耐性改変剤への感受性が低下することを明かにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は標的分子の同定に多くの時間を費やした。今後は、すでに取得している薬剤耐性改変剤の構造類縁体について活性評価を行い、構造活性相関を明らかにする予定である。また、推定標的分子を大腸菌内で大量発現させるための発現系の構築を行い、精製条件の検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画が順調に進捗したことに加え、既存の試薬により大部分の実験を行うことができたために、使用額が当初の計画より低額となり、次年度使用額が生じた。 使用計画については、翌年度分として請求した助成金と合わせ、主として物品費および解析の外部委託費として使用する予定である。関連分野における最新の研究動向の調査や研究成果を広く発信する目的で、国際・国内学会旅費や論文投稿料としても使用する計画である。
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