2022 Fiscal Year Research-status Report
微生物を利用したCoAコファクターエンジニアリングの物質生産への応用
Project/Area Number |
22K05376
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長南 茂 茨城大学, 農学部, 教授 (70312775)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 発酵 / 物質生産 / 応用微生物 / 生体分子 / コエンザイムA / 脂肪酸 / ポリヒドロキシ酪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、細胞内でアシル基のキャリアとして機能しているコエンザイムA(CoA)の生合成経路を強化することにより、炭素代謝を活性化し、有用物質生産に応用できる要素技術の開発を目指している。モデル微生物である大腸菌を使った研究において、アセチル-CoAの増産効果は生分解性プラスチックであるポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産で、マロニル-CoAの増産効果はバイオマス燃料となる脂肪酸生産でそれぞれ有効性が確認されている。これらの結果を踏まえ、本技術の汎用性を、①アセチル-CoA増産効果はCupriavidus necatorによるPHB生産で、②マロニル-CoA増産効果はシアノバクテリアによる脂肪酸生産で、さらに③低温菌による高度不飽和脂肪酸(PUFA)生産でそれぞれ検証する。④大腸菌においても、PHB、脂肪酸、およびPUFAの増産技術の開発を継続して実施する。 令和4年度は、①では外来のパントテン酸キナーゼ(CoaA)遺伝子を導入したC.necator形質転換体の構築、②では相同組換えでゲノムDNAにマロニル-CoA増産に必要なアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)遺伝子とcoaA遺伝子を導入した形質転換体の作製が完了している。いずれも、令和5年度から本格的な培養実験を開始する。③の低温菌については未だに形質転換体が得られていないが、④大腸菌を用いた研究においては低温菌のPUFA合成遺伝子を導入した形質転換体でEPA生成が確認され、今後はaccとcoaA遺伝子との共発現における増産効果を検討する予定になっている。また、チオエステラーゼ遺伝子導入による遊離脂肪酸生産ではマロニル-CoA生合成経路の強化で脂肪酸生成量が上昇することも確認され、PHB生産ではアセチル-CoA増産技術の有効性がメタボローム解析でも明らかにされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3種の外来coaA遺伝子をプラスミドに保持するC.necator形質転換体の構築は終了し、PHB生産試験の準備は整っている。Synechococcus elongatusを用いたマロニル-CoA生合成経路の強化の脂肪酸生産への有効性試験でも形質転換体が既に得られており、培養試験開始の準備は完了している。低温菌での高度不飽和脂肪酸生産では、報告されている形質転換法では対応できないことが分かり、改善点が明確になった。大腸菌を用いたアセチル-CoA増産技術のPHB生産への応用、およびマロニル-CoA増産技術の遊離脂肪酸生産への応用では、CoAコファクターエンジニアリングの有効性がそれぞれ確認されている。特に、前者ではCoA前駆体添加との組み合わせで細胞内アセチル-CoAレベルが劇的に上昇し、PHB生産に大きく寄与することがメタボローム解析で明らかにされ、大きな成果を得ている。 以上のように、低温菌よる高度不飽和脂肪酸生産への応用では遅れがみられるが、研究計画全体から考えればおおむね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
C.necatorにおける外来coaAによるアセチル-CoA生合成経路の強化がPHB生産へ及ぼす影響、およびS.elongatusを用いたマロニル-CoA生合成経路の強化の脂肪酸生産への有効性試験に関しては、令和4年度に構築した形質転換体の培養試験を開始し、細胞内のPHBおよび脂肪酸蓄積をそれぞれ解析する。低温菌による高度不飽和脂肪酸(PUFA)生産への応用では、accおよびcoaA遺伝子を保持するマロニル-CoA増産用プラスミドを導入する必要があるため、まずエレクトロポレーションによる形質転換の条件検討から再度始める必要がある。大腸菌を用いたPUFA生産試験では、PUFA生合成に関わる5つの遺伝子の並びを最適化し、まずはPUFAの生合成量を上げた後、マロニル-CoA増産技術を組み合わせて、その有効性を検証する計画を立てている。大腸菌による遊離脂肪酸生産への応用では、マロニル-CoAの増産効果が確認されたため、チオエステラーゼ遺伝子の由来を変え、炭素鎖がより短い中鎖脂肪酸の生産試験を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)令和4年度はおよそ20万円の残額が生じた。予定した実験がほぼ計画通りに進行して、試薬、消耗品等に充てる使用額が予定より少なくて済んだのが、主たる要因となっている。 (使用計画)大腸菌を使ったPHB生産試験で良好な結果が得られたので、オープンアクセスジャーナルへ論文を投稿中であり、論文掲載料に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)