2022 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集によるバクテリオファージ特性の改変とLLBファージの応用に関する研究
Project/Area Number |
22K05384
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
益田 時光 九州大学, 農学研究院, 助教 (90778060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本城 賢一 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00264101)
宮本 敬久 九州大学, 農学研究院, 教授 (70190816)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / ゲノム編集 / CRISPR-Cas / leaderless bacteriocin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、食中毒細菌の制御を目的として、CRISPR -Casシステムに代表されるゲノム編集技術を用いたバクテリオファージ(以降ファージ)遺伝子改変技術の基盤の構築と改変ファージの応用を目指し、以下の研究を行う。ゲノム編集によるファージ特性の改変として、1)複数テールファイバー(以降TF)遺伝子を保持するファージ(マルチテールファイバーファージ:以降MTFファージ)における宿主特異性とTF遺伝子の関連性の解明とその応用、2)溶原化関連遺伝子群や毒性遺伝子をゲノム編集によって取り除き、有用な溶菌ファージへと特性を改変させることを目指す。また、ファージ耐性化を防ぐための抗菌力強化のために、3)抗菌ペプチドリーダーレスバクテリオシン(LLB)産生ファージ(以降LLBファージ)の作製とその応用についての検討を進めてきた。 初年度においては、当初の計画に沿って、大腸菌ファージECP52を用いてMTFファージと宿主特異性についての研究を進め、ECP 52が宿主の表面構造のうちLPS、特にインナーコア領域の構造を認識部位として宿主を認識しているということが明らかとなった。 溶菌ファージ化に関しては、黄色ブドウ球菌溶原性ファージPSARaにおいて、integrase遺伝子を含む4遺伝子を欠損させることで溶原性を著しく抑えることができることが明らかとなった。 また、LLB産生ファージについては、大腸菌ファージECP52および黄色ブドウ球菌ファージPSARaを用いて2種類のLLB、lacticinQまたはaureocinAを産生するLLBファージの作成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MTFファージに関しては、当初の予定通り、宿主表面構造のうちLPSや外膜タンパクOmpがECP52の認識部位として利用されていることなどを明らかにした。これらの標的関連遺伝子欠損宿主およびECP52においてレセプター認識部位の特定を目指し研究を進めている。具体的にはTF関連遺伝子の欠損ファージを作成し、宿主行きへの影響を調べる。 溶原ファージの溶菌ファージ化については、既に4遺伝子欠損によって著しく溶原性が抑えられることを明らかにしたが、実際に4遺伝子が全て欠損する必要があるのかなどの検討を進めている。 LLBファージについても既に作成済みのものを用いてバイオフィルムへの効果などを評価している。 本研究は3つの大きな枠で進めているが、それら3つにおいて順調に研究が進められていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、MTFファージにおけるTF遺伝子と宿主行きの関係性について欠損株を構築するなどして解明を目指し、それと並行してT4ファージといったモデルファージにECP52のTF遺伝子を導入することで人工的にMTFファージ化するといった研究を進めていく。 また、溶菌ファージ化については、PSARaにおいて、関連遺伝子の単一欠損株、または複数遺伝子欠損株を作成して溶原性への影響調べる。 LLBファージについては、LLBの産生量という課題克服のため、複数のLLB遺伝子の導入などを試みる。また、大腸菌ど黄色ブドウ球菌だけでなく、EnterococcusやListeriaといったグラム陽性細菌ファージを利用した新たなLLB溶原ファージの構築も進めていく予定である。
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