2023 Fiscal Year Research-status Report
活性酸素種を量産する細胞質フラビン酵素が酸素に応答する現象・機構の解明
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22K05436
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
荒川 孝俊 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 助教 (30523766)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 酵素 / 活性酸素 / 植物二次代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニンニクのクラスB型フラビン含有酸素添加酵素(BFMO)であるAsFMO1に関する生化学・生物生産・構造解析の諸実験を行ってBFMO活性を調節する因子を探し出すこと、触媒サイクルにおける複雑な中間状態を調査することを課題としている。前年度までにAsFMO1、およびヒト肝臓ミクロソームで機能する哺乳類祖先型酵素AncFMO2を比較対照として過酸化水素生成活性を計測し、NAD(P)Hペルオキシダーゼ活性の有無を検証した。本年度は以下の項目を実施した。 1. AsFMO1の大腸菌組換え酵素を精製し、NADPHを導入した結晶をソーキング法により得た。この結晶の雰囲気を二原子ガス(一酸化窒素、一酸化炭素)に置き換えた条件下でのX線回折実験をおこなった。ガス導入による回折能の低下、あるいは測定前処理中のガス置換等の理由で、二原子ガス分子は電子密度マップ中に観測されなかった。 2. アリイン生成原料SACを基質とする生合成酵素の天然探索を実施した。SACに対してアリイナーゼ存在のもとでニンニク様香気を生じる葉ニンニク抽出液の精製をおこない、この分画に含まれるタンパク質の部分ペプチドを手がかりとして新たに480アミノ酸の未同定遺伝子を発見した。この遺伝子産物は配列相同性によりPEP依存性酵素と考えられた。 3. SACあるいはアリイン共存下の上記酵素やAsFMO1との粗酵素液に対してダイレクト質量分析による気相、液相成分計測を行った。これらの測定を通して過酸化水素は反応系中に検出されず、それに代えてSAC/アリインより高分子質量であるベースピーク162-163, 130を有するマススペクトルが液相中から観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NAD(P)Hペルオキシダーゼ活性に対する小課題2においては活性酸素生成に対して当初の予測と異なる結論が得られてきたことから、アリイン生成能力の向上を目指した生物生産、生化学に基づく小課題1、アリイン生成を高める課題3に対して昨年から引き続く解析に加えてスクリーニングを実施した。このことにより含硫分子生合成酵素に関連する新たな結果が得られた(実績2,3)。また、設定した4つの小課題のうち未実施であった、BFMOのX線結晶構造解析による反応中間体捕捉する目的とした小課題4の実験を着手した(実績1)。これらの課題実行により、BFMOの触媒サイクルにおける酸素や基質の挙動に関する知見、AsFMO1を含めた含硫二次代謝分子合成の分子機序理解に近づく経過が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見に基づいて、AsFMO1等の酵素作用機序、触媒機構に関した実験を進めていく。具体的には、実績2で得られた新規遺伝子産物に対しては異種発現や構造解析、酵素反応生成物の分析を目指した実験を行っていく。また当初の計画に従って小課題4を進め、結晶構造解析においては嫌気チャンバーなど雰囲気制御設備の導入も検討しつつ、高分解能データの取得に向けて条件を精密化していく。
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Causes of Carryover |
R5年度は概ね当初計画に従った支出であったが、R4年度において未使用額が発生していたため、R5年度からR6年度への次年度使用額が生じた。R6年度ではX線結晶解析、機器分析に対して当初計画以上に多くの実験が実施予定であり、これらの実験実施のため次年度使用額を必要とする。タンパク質調製、結晶化条件精密化に対する消耗品費ならびに試料調製や器具、実験結果解析の費用、学会参加費として使用する。
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