2022 Fiscal Year Research-status Report
Research to create homoisoflavonoid analogues with both AChE inhibitory and neurite outgrowth promoting activities.
Project/Area Number |
22K05458
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
野下 俊朗 岐阜医療科学大学, 薬学部, 教授 (50285574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 章博 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (70284081)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ホモイソフラバン / アセチルコリンエステラーゼ阻害活性 / 神経突起伸長促進作用 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dracaena cambodiana由来の「龍血」から単離されたホモイソフラバンを基に作出された4-(chroman-3-ylmethyl)benzene-1,2-diolは高いAChE阻害活性を示すだけでなく顕著な神経突起伸長促進作用を示したことから本化合物の構造を基にしたより高活性の化合物を作出することを目的とし、2022年度はホモイソフラバノン骨格の構築法の確立とホモイソフラバンB環の水酸基をハロゲンに置換した化合物の合成および生物活性試験の実施・解析を第一の目標とした。 従前の経路での合成はその過程(4H-chromen-4-oneからchromaneへの一段階での接触水素還元)に於いて反応の再現性の低さと多くの副生成物の生成といった問題がありベンズアルデヒド誘導体を出発原料とし、benzo[f][1,4]oxazepineを経由、"N-atom delection"を行ない最終的にホモイソフラバンへと変換する合成経路を計画した。検討の結果、本経路を用いることでホモイソフラボンB環の4位にフッ素,塩素,ヨウ素をそれぞれ導入した3-(4-harobenzyl)chromaneの合成を完了した。合成で得られたこれら類縁体を用いたAChE阻害活性活性試験を実施した結果、ホモイソフラバンB環の4位をフッ素化/塩素化した類縁体はいずれも4-OH体と同じ程度のAChE阻害活性を示した。一方、神経突起伸長促進作用に関しては顕著な作用は見られなかった。現在、3,4-ジハロゲン化誘導体を合成しその活性を4-(chroman-3-ylmethyl)benzene-1,2-diolと比較すべく合成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従前の合成は、4H-chromen-4-oneからchromaneへの還元を1回の接触水素還元で一気に行うものであった。本反応を実施したところ再現性の低さと多くの副生成物の生成といった問題が発生する。そこで本研究では、接触水素化を用いない別経路(benzo[f][1,4]oxazepineを経由し"N-atom detlection"を行なう経路)を計画した。 新経路では原料としてα-アミノアルコールを調製する必要があるが、種々検討の結果該当する構造を有したベンズアルデヒド誘導体を原料とし、N-Boc-phosphonoglycine trimethyl esterとのHWE反応(Horner-Wadsworth-Emmons反応)を経てα-アミノアルコールを得ることができた。得られたα-アミノアルコールをbenzo[f][1,4]oxazepineへと変換後、N-atom delectionを行なうことで目的としたホモイソフラバン誘導体へと導く経路を確立した。 確立した本経路をもってホモイソフラバンB環の4位にフッ素,塩素,ヨウ素をそれぞれ導入した3-(4-harobenzyl)chromaneの合成を完了した。得られた4-ハロホモイソフラバンを用いてAChE阻害活性試験を実施したところフッ素化体と塩素化体において100μMの濃度で顕著なAChE阻害活性を示すことが明らかとなった。これは、4-ヒドロキシホモイソフラバンと同程度の活性であるが、3,4-ジヒドロキシホモイソフラバンより低活性であった。一方、神経突起伸長促進活性試験ではいずれも4-ヒドロキシホモイソフラバン同様、目立った活性は示さなかった。 以上、新経路でのホモイソフラバン類の合成法を確立し、生理活性試験も実施できたことから研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に実施した研究からホモイソフラバンB環のカテコール構造の重要性は明らかであり、同B環にハロゲンを導入する場合でも3,4-ジハロゲン化が神経突起伸長促進作用に必須であると考えられる。そこで2023年度はまず3,4-ジハロホモイソフラバンの合成完了を第一の目標とする。進捗状況で述べたようにホモイソフラバンの合成はα-アミノアルコールを経由するが、出発原料をベンズアルデヒド誘導体から複素環(例えばピリジン環、インドール環などが想定される)を有するアルデヒド誘導体へ変更することで生物活性の教科や変化が期待される。これらC環の構造を大きく変えた誘導体の合成も試みる。 これまでの研究ではA環およびB環の構造に注目した類縁体の合成を行ってきたが、C環に関しては何ら化学的改変は行わなかった。そこで今年度はC環を改変した類縁体の調製を行なう。具体的にはC環を切断した構造となる1,3-diphenylpropane(C6-C3-C6)骨格をもつ化合物を多数合成する。この場合、A環の2位、B環の3位・4位に酸素官能基を有するものが最初の合成目標であり、次いでA環の2位、B環の3位・4位の各官能基をハロゲンその他に置き換えたものが次の合成目標である。 上述のこれまでに合成されたことのないホモイソフラバン誘導体を多数作出し、合成できたものから順次、AChE阻害活性試験および神経突起伸長促進作用活性試験を実施していく。その過程で両活性を併せ持つ化合物に必要な構造的な条件を検討する。なお、本研究で多数のホモイソフラバン誘導体を合成することである程度のホモイソフラバン誘導体のライブラリーとなるので、これを用いた新規な生物活性も追求することができる。
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Causes of Carryover |
研究の進展に合わせて購入を予定していた備品を2022年度に購入しなかったことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。今年度は昨年度購入予定であったいくつかの消耗品的備品(例えばマグネティックスターラーなど)を購入予定である。また、2022年度中に使用した試薬のうちの多くは既に購入済みのものであったために新たに購入する必要がなかったことも理由である。今年度は研究の進展に伴い、試薬の新規購入が種類、数量ともに増加する見込みである。 2022年度は新型コロナ感染症の流行が沈静化しなかったことにより研究分担者との研究打合せはメール/リモートのみであり旅費の使用がなかった。今年度は対面での研究打合せの実施に伴う旅費の支出を見込んでいる。
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