2022 Fiscal Year Research-status Report
ケトン体による腸内細菌叢の制御を介した胎生期低栄養に起因する生活習慣病予防
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22K05489
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平井 静 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (90432343)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 妊娠期糖質制限 / ケトン体 / βヒドロキシ酪酸 / 肥満 / 糖・脂質代謝 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでの研究において、マウスの妊娠後期糖質制限は、飼料摂取量の制限による総エネルギー制限(すべてのエネルギー源の制限)やたんぱく質制限とは異なり、次世代において高脂肪食誘導性の肥満や糖代謝異常を改善することを明らかにしている。また、妊娠期糖質制限下で出生した仔マウスの腸内細菌叢を無菌マウスに移植すると、同様に高脂肪食誘導性の肥満や糖代謝異常が改善されたことから、妊娠期糖質制限によって変化した腸内細菌叢が次世代において肥満予防・耐糖能改善に作用することが示唆された。そこで本研究では、妊娠期糖質制限によって腸内細菌叢変化が生じるメカニズムについてさらに検討するため、糖質制限時に血中で上昇するケトン体に着目し、妊娠後期のケトン体摂取が母獣および出生仔の腸内細菌叢や糖・脂質代謝に及ぼす影響を解明することを目的としている。 本年度はまず、ケトン体としてβヒドロキシ酪酸(βHB)を用いて、マウスへの投与濃度を決定する予備実験を行った。C57BL/6J雌マウスに普通食を給与するとともに、水のみ、または40%βHB溶液を水で5, 10, 20倍に希釈したものを約10日間自由飲水させた。その結果、水のみの投与群と比較してβHB投与群では飲水量が低下したが、いずれの群のマウスも3 mL/day以上の飲水が認められた。体重や飼料摂取量への影響はなく、またマウスが死亡することもなかった。以上の結果より、βHBは5倍希釈の濃度までは10日間のマウスの生存や代謝には大きな影響を与えないことが示唆された。 そこで次に、妊娠後期のマウスにβHBを投与する本実験を行った。C57BL/6J雌マウスの妊娠後期(妊娠10.5日目以降)に普通食を給与するとともに、5倍または10倍希釈した40%βHB溶液を飲水させた。現在、離乳後の出生仔の飼育を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物飼育室の空調機故障により動物実験開始が遅れたため、当初の予定よりもやや遅れが生じている。しかし、予備実験後すぐに本実験を開始しマウスの飼育を進めているため、次年度中には当初予定していたところまで実験が進展すると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、妊娠後期にβHB投与を行った雌マウスから出生した仔マウスが離乳したため、各群のマウスに普通食を自由摂取させ飼育を継続している。これらの仔マウスには成獣後に高脂肪食を約4カ月間給与し、肥満状態や糖・脂質代謝への影響を調査していく予定である。また、出産直前の母獣と離乳直後の仔マウスから採取した糞便の腸内細菌叢解析を行い、βHB投与による影響を、過去に行った妊娠期糖質制限による影響と比較検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は動物飼育室の空調の故障により動物実験開始が遅れ、実験の進捗にやや遅れが生じた。そのため、今年度終了しなかった動物飼育費用の一部が次年度使用額となった。次年度は、次年度分助成金と合わせて、動物飼育の続きと解剖後の組織解析および腸内細菌叢解析に使用する予定である。
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