2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of the technological basis for color enhancement of red wine by yeast
Project/Area Number |
22K05532
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
吉崎 隆之 福山大学, 生命工学部, 准教授 (70515189)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩口 伸一 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40263420)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ワイン醸造 / 酵母 / NYR20 |
Outline of Annual Research Achievements |
NYR20酵母の赤色色素分泌能を活かした,白ブドウ原料でのロゼワイン醸造を実現するため,シャインマスカット(SM)およびマスカット・ベーリーA(MBA)果汁を用いて大スケールでの試験醸造を試みた.まず,赤色色素が分泌されやすい条件を調べ,NYR20酒母調製時にYPAD培地を使用して速やかに白ワイン果汁に添加することで2日後に醪が着色することを確認した.この時,24時間4℃保管した酒母は4日後に,48時間4℃保管した酒母は6日後に醪が着色すること,そしてYPD培地で調製した酒母では着色しないことも分かった.また,この時酵母添加量を3倍に増やすことで,より着色することを確かめた. NYR20によるSMロゼワイン醸造では,比重変化がなくなるまでに39日かかり,この時点で醪の色調に変化がなかった.そこで目視ではっきり着色するまで55日発酵を継続した.製成したワインの吸光度(A520)は,別にW3酵母で小仕込み試験した場合と比べて約2.5倍の値を示したものの,欠点臭である酢酸が生成した.この時の酢酸含量は約5.8 g/Lで,W3で小仕込み試験と比べ約40倍量であった.滅菌処理した果汁では酢酸は生成しなかったことから,発酵期間が長期に及んだ影響により夾雑する酢酸菌が増殖したことが原因であると推測された.一方,NYR20によるMBAロゼワイン醸造では,同時に仕込んだRhone 4600酵母では比重変化がなくなるまで17日だったところ,29日を要した.製成したワインの吸光度(A420 + A520)は約1.7倍であった.また,MBA果汁によるロゼワイン醸造では酢酸生成は起きなかった. 以上のことから,NYR20でロゼワイン醸造を行うためには,4週間程度でアルコール発酵および赤色色素の分泌を終える必要があり,期待通り赤色色素を分泌させるにはブドウ原料にも依存することが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NYR20酵母によるロゼワイン醸造は実用可能であることが示された一方,ブドウ原料によって適・不適がある新たな課題が出てきた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はNYR20株のより安定した色素分泌の条件を小スケールで検討しつつ,大スケールでの試験醸造を繰り返し,再現性を確認していく.色素分泌安定化の条件検討については,未検証の以下4点を順次検証していく. 1. 酒母調製時のYPAD培地におけるアデニン濃度を,標準的な0.04%以外で試す. 2. 白ワイン(ロゼ)醸造時におけるNYR20による発酵速度の遅さから,自然酵母の増殖が起きている可能性があり,ブドウを殺菌して仕込むことでどのようなワインが生成するか検討する. 3. 赤ワイン醸造では通常発酵熱が産生し,タンク中心部が一時的に30度以上にも達するが,NYR20は発酵速度の遅いためタンクの温度はそこまで上昇しない.そこで温度制御により発酵温度を30度程度にすることで,発酵終了までの期間を短縮できないか検討する. ある程度安定した醸造が可能であることが分かれば,近隣のワイナリーでの酒母提供し製品化の検討を行いたい.またこの際、ワイナリーの協力を得てブドウ原料の違いによる適・不適についても予め検討を行う.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは主に購入した分析装置の納品額が予定より安かったこと、学会がオンライン開催で旅費が不要だったことによります。翌年度は現在のところ計画に変更はありません。
|
Research Products
(6 results)
-
-
-
-
[Presentation] ウイルスフリー甲州ブドウの果汁成分2022
Author(s)
樋江井大綺, 加藤利企, 小島晶子, 金政 真, 金丸京子, 町田千代子, 福田雅夫, 三輪錠司, 吉崎隆之, 松本省吾, 堤内 要
Organizer
日本食品化学学会 第28回総会・学術大会
-
-