2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05546
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Research Institution | Kagawa Nutrition University |
Principal Investigator |
宮澤 紀子 女子栄養大学, 栄養学部, 准教授 (20348147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 文陽 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (60337467)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | きのこ / 担子菌 / 微生物 / 子実体 / 食品機能 / 栽培 / 品種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、きのこの多様な食品機能に関する断片的な評価を統合し、栽培から消費に至るまでを一貫して検証し、付加価値の高い国産きのこのモデルをつくり上げることを目的とする。きのこの食品機能に関する研究は栄養や嗜好、生体調節機能と多岐にわたり、その研究成果は多様なきのこにも応用され、数多くの研究に発展している。一方、きのこは培養温度や湿度、光などの環境要因に加えて、菌株の選定や培地基材、栄養源が収益性を左右する極めて重要な因子とされている。さらに、それらは子実体成分組成に影響を与えることが指摘されているところである。このようなことから消費者が期待する食品機能を担保する真の付加価値の高い食品を見出すためには、生産から消費に至るまでを一貫して捉えて検証した基礎的なデータの蓄積が必須である。2022年度は、一定条件下で栽培して得た菌床栽培および原木栽培きのこを試料に、きのこの種類や品種、栽培条件による食品機能への影響を嗜好性および生体調節機能(機能性)の指標とする試験により検証した。嗜好性試験の分析値からきのこの種類による顕著な違いを確認した。成分項目は品種間差が大きいものと、ほぼ一定の範囲にある安定的なものとがあり挙動の違いを認めた。各種機能性試験では複数種類のきのこで高い活性を確認できた。2022年度に立ち上げたいくつかの試験を用いて、2023年度に計画していた調理加工による検討課題の一部を繰り上げて実施した。なかでも抗酸化作用は、各種加熱調理に伴う減退がいずれのきのこにもみられたが、その程度はきのこの種類によって異なった。同一種では品種間でその傾向はほぼ一致していた。嗜好性については、品種さらには栽培条件による挙動は複雑かつ多様であり、結論には至らなかったため各調理の工程や試料の調整条件の見直しをおこなっているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、食品機能の評価のために複数の試験の立ち上げをおこなった。そのなかで2023年度に計画していた調理加工試験の一部を前倒しでおこなうこととしたため、栄養成分の分析法の立ち上げに若干の遅れが生じた。理由は、本研究では一定の栽培環境が整う菌床栽培きのこと、自然環境に近い野外で生産するため天候等の影響を受けやすい原木栽培きのこを試料として設定していることにある。原木栽培きのこは収穫年度に調理試験を合わせて実施すること、各年度で繰り返し実施することが望ましいと考えた。上記の理由により、2022年度の計画の一部が完了しなかったものの、2023年度の計画を一部繰り上げて実施できた項目があることから全体の状況を本区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はきのこの種類さらには品種、栽培条件による食品機能への影響を取りまとめると共に、それらに調理加工による影響をふまえて総合的に解析する。きのこの生産から消費に至るまでの一連の成分変化を解析し、付加価値の高い国産きのこのモデル化を試みる。その過程では、食品機能の増強が図れる工程や逆に減退が著しい工程での処理条件を追試験により検討し組み立てるものとする。さらにヒトを対象として、きのこのうま味を主体とした嗜好性が食事バランスに与える影響を検証するとともに、最終年度の脂質代謝におよぼすヒト試験への準備を進める。
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Causes of Carryover |
2022年度の食品機能分析の遅れに伴い、当該金額に未使用分が生じた。翌年度に実施する分析用試薬の購入等に充て、適切に使用する。
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