2022 Fiscal Year Research-status Report
アブラナ近郊系統間に生じた新規一側性不和合性の遺伝育種学的解析
Project/Area Number |
22K05581
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高田 美信 東北大学, 生命科学研究科, 技術専門職員 (30451610)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アブラナ科植物 / 自家不和合性 / 一側性不和合性 / 花粉・柱頭情報伝達 / 受粉時不和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナノポアシークエンスにより新規一側性不和合性形質UIbを支配する遺伝子座であるUI遺伝子座(A04染色体)の解析を行った。その結果、Brassica rapaはUI遺伝子座から約400kbの距離に柱頭側因子SUI1と非常に似た相同遺伝子SUI2が座上していることを明らかにした。さらに、UIb形質を示すS27系統ではこの相同遺伝子SUI2が欠失していた。SUI2の存在の有無とUIb形質との関連を調査するため、大規模な分離世代の解析を行い、UIbの柱頭側因子の候補遺伝子がSUI1そのものであることを明らかにした。現在、S27系統が持つSUI1-3アレルの遺伝子導入を開始している。 花粉側因子については、候補遺伝子である並列に3つの重複が見られるPUI1遺伝子の簡易的な発現解析と多型解析を行ったところ、3つ重複PUI1遺伝子のうち、一つは開始コドン後4bpにstopコドンを生じる変異が存在していること、もう一つは葯内での発現量が低いという結果を得た。これらにより、3つのPUI1重複遺伝子のうち、PUI1-4と名付けた遺伝子がUIbの花粉側原因因子ではないかと推察した。PUI1-4遺伝子の遺伝子導入に向けて準備中である。また、UIbの原因遺伝子候補が、SUI1, PUI1の対立遺伝子であると考えられたため、既知の自家不和合性関連因子であるSRK, MLPK遺伝子とUIb形質との関連性を調査するため、対立性検定を行った。この結果、mlpk/mlpk変異体背景ではUIb形質が消失したことで、UIb形質が自家不和合性と同一の反応系を利用するものと考えられた。この研究の際、mlpk変異体と自家不和合性系統との間で、S29系統がMLPK非依存的自家不和合性機構を持つことを明らかにし、論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要で述べた通り、詳細なマッピングと多型解析ならびに発現解析の結果から、新規な受粉時不和合性(一側性不和合性)組合せを支配する柱頭側・花粉側の両因子候補を単離するに至っている。また、柱頭側因子に関しては遺伝子導入実験を開始しており、花粉側候補因子についても23年度より開始する予定である。当初予定では遺伝子導入による原因遺伝子の機能証明を23年度内に開始するとしていたことから、計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、新規な受粉時不和合性形質を支配する柱頭側・花粉側両因子の単離と解析を第一目標としているため、遺伝子導入による機能証明を進める。さらに、一側性不和合性遺伝子間の多型情報取得と純系系統同士による交配試験を行うことで、複雑な一側性不和合性形質の分子機構解明を目指していく。
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Causes of Carryover |
22年度春季の天候不良による病害発生のため、当初予定の次世代シークエンスによるゲノム解析とトランスクリプトーム解析に使用するサンプルの調整が大幅に遅れることとなり、それらを次年度に実施するため。また、発表した論文のopen access料が次年度に請求されることから、これらを次年度使用額とした。
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Research Products
(2 results)