2022 Fiscal Year Research-status Report
最先端リモートセンシング技術と土壌断面情報の融合による作物生産の適正化
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22K05590
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
木下 林太郎 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 助教 (70793678)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土壌 / 空間変動 / 精密農業 / 畑作物 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道十勝地域では大規模畑作が行われている。作物の生産性や品質の向上、生産コストや環境負荷の低減を実現するためには、圃場内の栽培環境のばらつきを把握し適切な管理法を構築する必要がある。とくに、土壌の水分や養分供給力のばらつきの評価が重要であると考えられている。本研究は帯広畜産大学内の大規模バレイショ栽培圃場を対象とした。作付け前にバギー搭載の自動土壌採取機を用いて500点以上の土壌試料を採取した。また、圃場内の4ヶ所で土壌断面調査を実施した。栽培品種は加工用バレイショのトヨシロを用い、収穫は収量センサー搭載のハーベスタを用い、収量マップの作成を実施した。土壌断面調査から圃場内にアロフェン質黒ボク土と多湿黒ボク土という2つの異なる土壌群が存在することが明らかとなった。表層土壌では腐植含量に大きなばらつきが存在し、保肥力のばらつきも大きかった。これらは、圃場内に存在する微地形が影響を及ぼしたと考えられた。バレイショの収穫にあたり、収量センサーで計測された値と実際に収穫されたバレイショを鉄コンテナに入れ計測することで比較した。その結果、収量センサー測定値の方が若干測定値が大きくなる傾向が見られた。バレイショ収量は圃場の平均で約35t/ha程度であったが、圃場内で25t/haを下回るエリアから50t/haを上回るエリアまで存在した。今後は、バレイショ収量を規定する要因を把握するためにデータ解析を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた数百点の表層土壌試料の採取、土壌断面調査、収量センサーを用いたバレイショ収穫、ドローンを用いた土壌およびバレイショ生育期の画像取得の全てを実施することができた。表層土壌の採取にはバギー搭載の自動土壌採取機を利用し、1日で約250サンプルの採取が可能であることが明らかとなった。土壌断面調査は圃場内で4ヶ所実施し、圃場内の土壌特性の違いを詳細に評価した。土壌の鉱物組成に関する分析は帯広畜産大学において実施し、土壌理化学性は十勝農協連農産化学研究所において実施し詳細な土壌特性のマップを作成した。バレイショの植え付けと圃場管理は株式会社ロジネットジャパン協力のもと実施した。収量センサーを用いた収穫作業は農研機構協力のもと実施した。圃場内の5ヶ所においてバレイショ生育期間中に地上茎を毎週収穫し、養分吸収量を評価した。収穫期にはバレイショ塊茎を収穫し、収量だけでなく比重などの品質を規定する因子の評価を行なった。また、収穫された塊茎の元素組成を分析し、養分吸収量を評価するとともに、元素組成と塊茎の品質との関係性を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目的は大規模畑作生産圃場におけるバレイショ収量の制限因子の抽出と適正化である。2022年度は計画以上に土壌およびバレイショの収量や品質に関するデータの取得が進行した。今後は取得されたデータの解析を実施する。とくに、大規模畑の圃場内の土壌特性にどれだけばらつきがあるのか、その規定要因の解明を行う。土壌の加給態養分は作物の生産性に重要な影響を及ぼすと考えられている。圃場内の加給態養分に関してはさらに詳細な評価を行う。また、これらの土壌特性とバレイショ収量および品質との関係性を評価する。その方法として空間統計や機械学習の手法を利用する予定である。これらの結果は日本土壌肥料学会等の学会において発表するだけでなく学術論文にまとめ公表する予定である。また、十勝地域をはじめ北海道内や道外の畑作物生産者にこれらの研究結果を伝えていく必要がある。その方法として、農協における勉強会や、農業関連の一般誌への執筆も検討する。
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Causes of Carryover |
研究対象地が大学内の圃場なため、旅費の支出額が少なかった。人件費に関しては、大学院生が分析を担当したため給与の支払いが必要なかった。本研究者が令和5年度に退職予定のため研究費の使用予定はない。
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Research Products
(1 results)