2023 Fiscal Year Research-status Report
栽培時の光環境制御によるスイートバジルの低温感受性変動要因の解明
Project/Area Number |
22K05618
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
野口 有里紗 東京農業大学, 農学部, 准教授 (10445695)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 低温障害 / 脂肪酸 / 酵素活性 / スイートバジル / サーモカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
バジルの低温感受性に差異が生じるメカニズムを葉中成分と植物の形態などから明らかにするために、前年度に選抜した低温感受性が異なる4品種を対象として詳細に調査を行った。 本葉ではPPO、LOX、PODの酵素活性が高かったことから、葉から脂肪酸を抽出しGC-MSで組成を測定した。スイートバジル葉の脂肪酸の主成分はα-リノレン酸が40~60%、次いでリノール酸とパルミチン酸の含有量が高く、脂肪酸全体に対する不飽和脂肪酸の占める割合は60~80%であった。低温感受性の高い品種では不飽和脂肪酸含有率が高く、また低温障害が発生しやすい茎頂は本葉よりも不飽和脂肪酸の割合が高かった。本葉での含有率は栽培環境で異なり、白色LED灯人工気象室では63~67%、太陽光ガラス温室では73~79%と人工気象室より高くなった。しかし褐変の発生程度と不飽和脂肪酸およびα-リノレン酸、リノール酸含有率との間に相関は見られず、不飽和脂肪酸含有率の向上が低温感受性を緩和する既知の知見と異なる結果を示した。 サーモカメラを用いて低温の伝達速度や程度に品種や部位、栽培環境による差があるかを観察した。常温のサンプルを5℃の冷蔵庫内に入れた場合は2~3℃/分の速度で庫内温度まで低下したが、低下速度に有意な差は見られなかった。いずれの品種も温度低下は葉身が最も早く始まり、庫内温度と同程度になったのちは茎頂や茎の温度が低めに保たれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
栽培施設の人工気象室が故障し修理のため3か月間使用することができなかった。ガラス温室栽培株で実験を進めたが病害虫の発生と高温の影響で品質が均一なサンプルが得られず、光強度の強い夏季に予定していた実験が次年度に繰り越しとなった。 またLC-MS分析での適切な条件検討に手間取り、予定していたポリフェノール分析が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
光条件を変えた予備試験で、常温にもかかわらず収穫後ただちに変色が始まるサンプルを得ることができた。この条件と品種間差を組み合わせて、スイートバジル葉中の成分や酵素活性の詳細分析を行う。さらに分析条件の検討と調整が遅れているLC-MSによるポリフェノール類の測定を早急に実施し、要因となる成分を探索する主成分分析を行う。また葉の光学的形態データと合わせて脂肪酸組成と低温感受性が既知の知見と異なる要因の考察を行う。
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Causes of Carryover |
前年度繰越金の存在を忘れて支払請求額だけで予算を使用したため次年度使用額が発生した。 本年度の消耗品に組み込み、資材値上がりの差分補填として使用する計画である。
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