2022 Fiscal Year Research-status Report
水田雑草の遺伝的多様性は過小評価されているか? 史前帰化説再考への植物地理研究
Project/Area Number |
22K05694
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
保田 謙太郎 秋田県立大学, アグリイノベーション教育研究センター, 准教授 (00549032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 祐一郎 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (50322368)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水田雑草 / 地理的変異 / 史前帰化植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の水田雑草の多くは、約2600年前の稲作の渡来に付随して日本列島に侵入した史前帰化植物であり、日本に自生していた野生種からの雑草化はわずかであると考えられてきた。また、水田雑草の遺伝的多様性は低いと考えられてきた。その理由は日本列島への侵入時の瓶首効果による遺伝的浮動、日本列島北進時の遺伝的浮動、帰化からわずか2600年しか経過していないためである。一方、研究代表者らは、史前帰化植物であるとされている種であっても、実際には日本に自生する野生種からの雑草化と史前帰化の両方に起源したとする多重起源説を提案した。この多重起源説については、日本国内の水田雑草の地理的変異や遺伝的多様性を調べれば、検証できると考えられる。本研究では、史前帰化植物と考えられてきた複数の水田雑草を東北地方、近畿地方、九州地方から収集する。それらについて形態やDNAバーコーディング法を用いた種鑑定、染色体数の調査を行い、近縁種や倍数性の違うタイプの混入をチェックする。鑑定済みの材料を対象としたMIG-Seq法とSTRUCTURE 解析による地理的変異の分析によって多重起源説を検証する。 2022年度は、東北地方では秋田県で、近畿地方では大阪府と兵庫県で、九州地方では福岡県、佐賀県、熊本県、長崎県、宮崎県で水田雑草(イヌホタルイ、イボクサ、コナギ、クサネム、オモダカなど)を収集し、種子を保存した。種子形態を用いた種の同定を行った。また、植物体を収集できた個体については標本を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年には東北地方、近畿地方、九州地方で複数の水田雑草の種子を集めることがきた。また、九州地方の平場ではスクミリンゴガイの食害によって水田雑草を見つけることが難しいこともあったが、標高の高い地点では食害も少なく、目的とする水田雑草を収集できることも判明した。このように九州地方では水田雑草の収集にやや苦労したが、予定どおりに材料を収集できており、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には九州地方(鹿児島県、宮崎県)、近畿地方(奈良県、兵庫県)、東北地方(宮城県、岩手県)で引き続き水田雑草を探索し、種子を収集する。また、2022年度に収集した系統を栽培し、DNAを抽出し、DNAバーコーディング法によって種を同定するとともに、染色体を観察し、染色体数の違いや倍数性の有無を確認する。また、MIG-Seq法による変異解析の予備実験を実施する。
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Causes of Carryover |
水田雑草の収集に他の研究費も活用でき、節約できたため。また、分担者が病気療養につき研究活動を停止したため、繰越金がやや多くなった。研究代表者が分担者分の調査および実験分を進め、申請分の助成金を使用する。
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