2023 Fiscal Year Research-status Report
The impact of wintering ecology of Lesser White-fronted Goose on their population dynamics
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22K05700
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Research Institution | Yamashina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
澤 祐介 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (00896011)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生息地選択 / 環境利用 / カリガネ / 採食内容 / 渡り / 越冬地 |
Outline of Annual Research Achievements |
越冬地におけるカリガネの生息地選択解明のため、本年度は、カリガネの発信器による追跡調査、調査地におけるカリガネの利用環境・栄養状態の季節変化、食性解析のための糞サンプルの採取を前年度に引き続き、実施した。 発信器による追跡調査では、現在、9羽を継続追跡中である。発信器装着個体は、2023年5月上旬から9月まで繁殖地であるロシア・アナディール内陸部とその周辺に滞在した後、10月に中継地に移動、11月に越冬地に移動した。追跡中の9個体は、全て宮城県登米市で越冬期中に捕獲した個体であるが、このうち、5個体が捕獲地である登米市に帰還したものの、残り4個体は中国長江流域へと越冬地を変更した。ガン類の越冬地変更に関する記録は非常にまれであり、今後越冬地変更の要因の解明を検討する。 カリガネの利用環境については、2023年10月から2024年2月にかけて2週間に2日間のペースで宮城県登米市内の調査地約600haにおいて、カリガネの個体数および採餌した農地の特徴、その時のカリガネの脂肪蓄積状態を記録した。調査地周辺は昨年度に比べて温暖であり、稲刈り後の二番穂の生育も良かったため、昨年度よりも水田を頻繁に利用する傾向がみられた。また、栄養状態についても、越冬地への渡来初期である10月の段階で、すでに脂肪蓄積量が良好であり、夏季から秋季にかけての繁殖地、中継地との気候、植物の生育状況などとの関連性が考えられた。 糞サンプルの採取では、11月から2月にかけて80サンプルを収集した。2024年度に食性解析を実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発信器を装着したカリガネは、全て1年間の追跡に成功している。発信器の機種選定、装着方法、装着部位等を事前に詳細に検討したことで、想定以上のデータを取得することができている。 追跡により、渡りルートや環境利用についての新たな知見を得ることができており、今後の解析により、新規性の高い論文として発表することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、発信器個体の追跡継続を行いつつ、これまでの追跡データの解析、収集した糞サンプルの分析を重点的に行う。 発信器追跡では、越冬期に利用した農地の特徴の定量的な分析に加え、特に越冬地を中国に変更した個体の渡りルートを中心に経年変化について解析する。食性解析では、糞のサンプルのDNAメタバーコーディングによる食性解析を重点的に行う。 これらのデータについては、中間報告として、日本鳥学会大会(2024年9月開催)にて発表する。
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Causes of Carryover |
2023年11月から2024年2月までに収集したカリガネの糞80サンプルについて、DNAメタバーコーディングの分析を外部委託する予定であったが、前処理に時間がかかり、委託が2024年3月までに完了しなかったため。 繰越金については、2024年度に同分析費用にて使用予定である。
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