2023 Fiscal Year Research-status Report
森林害虫ハバチ類の防除技術開発のための基盤研究:細胞内共生細菌への着目
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22K05732
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
綾部 慈子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70546994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相川 拓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90343805)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハバチ / ボルバキア / 害虫防除 / 森林害虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハバチ類における細胞内共生細菌感染の有無を把握するため、害虫種から普通種まで多種のハバチを採集し、細胞内共生細菌 (Wolbachia、 Cardinium) の感染についてPCR法(ftsZ、 wsp、 16Sのプライマーを使用)を用いて確認した。昨年度と合わせ、これまでに合計5科47種のハバチを採取した。このうち、産雌性単為生殖もしくはオスが未知である種は4種のみであり、残り43種は雌雄ともに存在する種であった。共生細菌の感染については現在14種の診断を終了し、4種で3つのプライマー全てにおいて、また、1種でftsZを除く2つのプライマーで感染を示す結果が得られた。これら5種は、全て両性が存在する種であり、ノイバラの害虫として知られるアカスジチュウレンジやトウヒ類の害虫のオオアカズヒラタハバチが含まれた。このハバチにおいて、共生細菌が感染系統と非感染系統との間で細胞質不和合を引き起こす場合、 非感染系統の作出によって繁殖攪乱を生じさせることできるかもしれない。このほか、ハバチ系統樹上での共生細菌感染の位置付けを行うことを目標として、ハバチのミトコンドリアDNACOI領域の塩基配列を基に系統樹作成を試みた。一部のハバチ種では配列を読み取ることができなかったことから、今後も系統樹作成手法を検討する必要性が示唆された。 また、共生細菌の感染が確認されたトウヒ類の害虫であるオオアカズヒラタハバチの幼虫を採集し、飼育系統の作出を試みた。幼虫は土中に入り土窩を作成したものの、病気感染のため羽化せず、飼育に結びつけることはできなかった。野外採取個体は病気感染している個体が含まれていることから、採取個体数を多くし、健全個体を獲得する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況については、概ね順調に進展しているものの、森林害虫の1種で産雌性単為生殖を行うカラマツハラアカハバチを採取できていないことや、森林害虫のハバチでボルバキア感染がみられたオオアカズヒラタハバチの飼育が成功していない点が課題である。 一方、多種のハバチを採取することで、生態等の詳細が不明であったマツハバチ属のチョウセンカラマツハバチが同属のマツノクロホシハバチと同所的に存在しうることが明らかになり、不明であったチョウセンカラマツハバチ幼虫の外見がマツノクロホシハバチとほぼ同じであることや、遺伝的な差がほとんどないことも予備データから明らかになり、予定外の成果についても得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
害虫種から普通種まで特に森林生息性ハバチを中心に採取し、細胞内共生細菌 (Wolbachia、 Cardinium) の感染についてPCR法を用いて確認するとともに、系統樹作成を試みる。また、共生細菌が確認された種のうち、森林害虫種を対象とし、飼育系を確立し、感染除去系統の作出を試みる。
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Causes of Carryover |
ハバチの採集及び学会参加を見込んで旅費を計上したものの,試料を送付によって得ることができたり,公共交通機関ではなく事業用車を使用してハバ チ採集へ行く機会が多くあった。また,本研究課題の成果を用いて学会発表するに至らなかったため、旅費の使用が生じなかった。これらの理由により,旅費の使用が予定額よりも少なかった。次年度はハバチ採集の旅費や学会参加に使用予定である。また、共同研究者の異動に伴い打合せ等による旅費やサンプル送付に伴う運搬費にも使用予定である。物品費については,サンプル処理数が予定よりも少なく,消耗品や薬品類の購入が抑えられたことから,次年度の物品購入のための使用を予定している。次年度はDNA抽出やシーケンスを行うため,その外注費用に加え,サンプル処理数の増加が見込まれており、人件費としても使用予定である。
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